2011/8/22

総合 –EUウオッチャー

ルーマニア人への就労制限復活、欧州委が承認=スペイン

この記事の要約

欧州委員会は11日、スペインがルーマニア人労働者に対する就労制限を復活させることを承認したと発表した。EU加盟国が他の加盟国に対していったん開放した労働市場を閉ざすのは異例だが、スペインでは雇用悪化が深刻なことから、やむ […]

欧州委員会は11日、スペインがルーマニア人労働者に対する就労制限を復活させることを承認したと発表した。EU加盟国が他の加盟国に対していったん開放した労働市場を閉ざすのは異例だが、スペインでは雇用悪化が深刻なことから、やむを得ない措置と判断した。スペインは他の加盟国による承認を経て、ルーマニア人労働者に2012年末まで就労許可証の取得を義務付ける。

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スペインは2007年1月にEU加盟国となったルーマニアに、09年1月に労働市場を開放した。しかし、その後の経済危機により雇用状況が悪化し、失業率が昨年5月から20%を超えている。このため政府は、スペイン人の雇用を守るため、7月下旬にルーマニア人への就労制限復活を打ち出していた。

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欧州委は同措置について、スペインの雇用悪化に加え、ルーマニア人移民の多くが失業して政府の社会保障負担が膨らんでいることから、「例外的な状況にある」として新たな移民の流入を制限する措置の導入に理解を示した。

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スペインでは労働市場開放に伴いルーマニアから多くの労働者が殺到。欧州委によると、2006年に38万8,000人だったルーマニア系移民は昨年1月時点で82万3,000人まで急増し、モロッコ人を抜いて国内最大の移民社会を形成している。うち19万人余りが失業状態にある。EUでは他の加盟国出身の労働者に国内労働者と同じ社会保障を提供することが義務付けられていることから、財政悪化に直面するスペインにとって少なからぬ負担となっている。

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EUでは原則的に、加盟国が相互に労働市場を開放し、各国の労働者が国境を越えて自由に移動できることになっている。しかし中東欧諸国に関しては、安価な労働力が西欧に大量流入し、雇用に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、従来から加盟していた西欧15カ国には7年を上限に就労を制限する権利が認められている。2007年1月に加盟したルーマニア、ブルガリアに対しては2013年12月末まで、労働市場開放を見送ることができる。

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EUで他の加盟国への労働市場開放を見直し、就労制限を復活するのは初めてのケースとなる。

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