2011/9/12

産業・貿易

欧州委が10月にMiFID改正案発表へ、清算機関の自由化など柱

この記事の要約

EUでは金融規制改革の一環として、投資サービスと域内の金融・資本市場を包括的に規制する「金融商品市場指令(MiFID)」の見直しが進められているが、欧州委員会は10月にもMiFID改正案を提示するもようだ。欧米メディアが […]

EUでは金融規制改革の一環として、投資サービスと域内の金融・資本市場を包括的に規制する「金融商品市場指令(MiFID)」の見直しが進められているが、欧州委員会は10月にもMiFID改正案を提示するもようだ。欧米メディアがEUの内部文書を基に報じたもので、金融商品取引市場の取引参加者が債務引受けを行う清算機関を自由に選択できる仕組みの導入や、国債、コモディティ、二酸化炭素(CO2)排出権など幅広い商品を規制対象に加えることなどが改正案の柱になるとみられている。

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MiFIDは金融・資本市場の統合を目的として1993年に導入された「投資サービス指令」に代わる規制の枠組みとして2004年に制定され、07年11月に施行された。証券会社、銀行、証券取引所など投資サービスを提供する事業者の認可要件や順守すべき域内共通のルールを定め、市場の透明性を高めると同時に投資家保護を図っている。しかし、金融技術の進歩による新たな商品やサービスの登場に加え、金融危機が欧州市場に深刻な影響を及ぼし、同指令の施行後に金融市場の環境は大きく変化した。そこで欧州委は昨年12月から今年2月にかけてMiFIDの見直しに関する意見募集を行い、その結果を踏まえて改正案の策定を進めていた。

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MiFIDの見直しは金融危機の反省を踏まえ、より安全で健全かつ透明性と信頼性の高い金融システムの構築を目的としており、特に店頭市場で取引されている金融派生商品(デリバティブ)に対する監視強化などに主眼が置かれている。複数メディアが入手した資料によると、欧州委はすべての店頭デリバティブ契約について、取引所または電子取引プラットフォームでの取引と、中央清算機関を通じた決済を義務化する方針。これは2009年9月に開催されたG20ピッツバーグ・サミットの合意に沿った内容で、店頭デリバティブ市場の透明性を高めて監督機関が取引の全容を把握できるようにするのが狙いだ。

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欧州委はまた、証券取引所がそれぞれ中央清算機関を傘下に持ち、有価証券の売買から清算・決済に至る一連の業務を市場ごとに独占している現状を問題視している。「垂直型サイロ(vertical silos)」と呼ばれる現行システムによって新規参入が阻害され、その結果、手数料が高く設定されるといった弊害が生じているとの分析によるもので、同委は証券会社や銀行などの取引参加者が国境を越えて自由に清算機関を選択できる仕組みの導入を提案している。

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このほかコモディティ市場への投機的な資金の流れがエネルギーや農産物などの急激な価格上昇と過度の流動性をもたらしている現状を踏まえ、すべてのタイプのコモディティ・デリバティブをMiFIDによる規制の対象として金融監督当局による監視を強化することが改正案に盛り込まれている。欧州委はさらに、EU排出量取引制度(EU-ETS)に基づく排出権取引にもMiFIDによる規制を適用し、市場の透明性と信頼性を高める必要があると指摘している。

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