2011/9/12

産業・貿易

仏のGM作物栽培禁止「手続きに誤り」、欧州裁が判決

この記事の要約

欧州司法裁判所は8日、EUが栽培を認可している遺伝子組み換え(GM)作物について、加盟国が独自の判断で国内での栽培を禁止する場合、人間や動物の健康と環境に及ぼすリスクを明らかにしたうえで、事前に欧州委員会に禁止措置につい […]

欧州司法裁判所は8日、EUが栽培を認可している遺伝子組み換え(GM)作物について、加盟国が独自の判断で国内での栽培を禁止する場合、人間や動物の健康と環境に及ぼすリスクを明らかにしたうえで、事前に欧州委員会に禁止措置について報告しなければならないとする判決を言い渡した。欧州委はGM作物の栽培を認めるか否かの判断を各国政府に委ねる方針を打ち出しているが、国レベルで禁止措置を講じる際の手続きを問題視した判決が出たことで、GM作物の栽培を独自に禁止しているフランスやドイツなどは対応の見直しを求められることになる。

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今回の事案は米農業化学大手モンサントが開発した害虫抵抗性のGMトウモロコシ「MON810」をめぐり、仏政府が2008年に環境への影響を理由に国内での栽培を禁止した措置の撤回を求めて同社が訴えた裁判で、フランスの行政裁判所にあたる国務院がEU司法裁に判断を求めていた。MON810はEUが域内での栽培を認可している2種類のGM作物のうちの1つで(もう1つは独BASFのGMジャガイモ「アムフローラ」)、フランスのほかオーストリア、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、ルクセンブルクの計7カ国が国内での栽培を禁止している。

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司法裁は加盟国の判断でEUが認可しているGM作物の栽培を禁止することは可能としたうえで、そのためにはまず、禁止措置を講じなかった場合の人体や動物、環境への「明白かつ深刻なリスク」を提示して、欧州委に「緊急措置」を講じる必要性を「正式」に報告しなければならないと指摘。報告を受けた欧州委が何も対策を講じなかった場合は、同委と他の加盟国に対して速やかに緊急措置の具体的な内容を通知した後に、はじめて実行に移すことができると説いている。

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フランスのコシウスコ=モリゼ環境相は判決について、「環境リスクについては回答が得られていない。したがって、手続き上の理由でわが国のセーフガード条項が無効とされるのであれば、EU司法裁の見解に沿った形で早急に新たな条項を策定する」と述べた。一方、モンサントの広報担当は「MON810は15年以上にわたり農業、経済、環境面のメリットと安全性が証明されている。フランスの農業者は同品種を選択肢として尊重すべきだ」とコメントしている。

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