2011/9/19

産業・貿易

カスピ海横断パイプライン計画、EUが2カ国との交渉開始で合意

この記事の要約

EU加盟国は12日、アゼルバイジャンおよびトルクメニスタンとの間でカスピ海横断パイプラインの建設に関する協定の締結交渉を開始することで合意した。EUはカスピ海周辺国からロシアを迂回して天然ガスを欧州に運ぶ「南回廊」構想を […]

EU加盟国は12日、アゼルバイジャンおよびトルクメニスタンとの間でカスピ海横断パイプラインの建設に関する協定の締結交渉を開始することで合意した。EUはカスピ海周辺国からロシアを迂回して天然ガスを欧州に運ぶ「南回廊」構想を進めており、アゼルバイジャンとトルクメニスタンを結ぶ海底パイプラインの建設は同構想の鍵を握るプロジェクト。アゼルバイジャンはすでに欧州向けガス供給を確約しているが、今後は欧州委員会がEU27カ国を代表してパイプラインの建設・運営や、ガス供給に関する条件などについて両国との交渉にあたり、計画の早期実現を目指す。

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EUはガス供給源や輸送ルートの多様化を進めてエネルギー分野におけるロシア依存からの脱却を図ろうとしており、カスピ海横断パイプラインの建設もそうした戦略の一環。今年1月には欧州委のバローゾ委員長とエッティンガー委員(エネルギー担当)がアゼルバイジャンとトルクメニスタンを訪問。その際、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は同国から欧州向けの天然ガス供給に関する共同宣言に署名し、カスピ海沖の天然ガス田から長期にわたり、相当量のガスを欧州向けに供給することを約束した。

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カスピ海パイプラインの建設が実現すれば、南回廊と同パイプラインの接続が可能になり、EUの「脱ロシア依存」は大きく前進する。ただし、南回廊ではトルコからブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを経由してオーストリアまでの全長3,300キロを結ぶ「ナブッコ・パイプライン」のほか、トルコと南イタリアを結ぶ「ITGI」、ギリシャからアドリア海を経由してイタリアに至る「トランス・アトランティック・パイプライン(TAP)」など、複数のプロジェクトが計画されており、アゼルバイジャン、トルクメニスタンとの協定交渉では、どのパイプラインにどの程度の量の天然ガスが供給されるかが焦点になる。

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エネルギー協定の締結交渉で加盟国が欧州委にマンデート(交渉権限)を与えるのは今回が初めて。エッティンガー委員は声明で「欧州は今後、1つにまとまって意見を表明することができる。カスピ海横断パイプラインは欧州向けの新たなガス供給源となる南回廊の主要プロジェクトだ。できるだけ早く両国との交渉をまとめたい」と述べた。

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