2011/10/17

総合 –EUウオッチャー

欧州委が銀行の資本増強策を発表、配当・賞与の凍結など盛り込む

この記事の要約

欧州委員会のバローゾ委員長は12日、ユーロ圏で深刻化する債務危機が欧州の金融機関に波及する事態を防ぐため、域内の銀行に対して自己資本比率の大幅な引き上げを求める方針を打ち出した。各行が保有するギリシャなど財政状況が悪化し […]

欧州委員会のバローゾ委員長は12日、ユーロ圏で深刻化する債務危機が欧州の金融機関に波及する事態を防ぐため、域内の銀行に対して自己資本比率の大幅な引き上げを求める方針を打ち出した。各行が保有するギリシャなど財政状況が悪化している国の国債価値を厳格に査定したうえで、自己資本比率が一定の水準に達していない場合は「資本不足」とみなし、速やかな資本増強を求める。自力での調達が困難な銀行に対しては、各国政府による公的資金の投入や欧州金融安定基金(EFSF)の資金を活用して財務体質を強化し、実体経済への波及を未然に防止する。今月23日のEU首脳会議での合意を目指す。

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欧州では今月10日、フランスとベルギー政府が大手金融グループのデクシアについて、不良資産を切り離したうえで銀行部門を一時国有化する解体・処理に乗り出した。同行は今年7月のEUによる資産査定(ストレステスト)に合格していたが、大量に保有するギリシャやイタリアなどの国債価格の大幅な下落を背景に資金調達が困難になり、債務危機のあおりで解体に至った初の大手行となった。

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銀行の資本増強策はこうした事態を受けたもので、資本増強が進まない銀行に対しては、各国の銀行監督当局を通じて配当や幹部へのボーナス支給を禁止するなどの措置が盛り込まれている。バローゾ委員長は新たな審査基準について具体的な数字には言及していないが、ストレステストではユーロ圏のGDPが0.5%のマイナス成長となり、欧州の株式相場が15%下落するといったシナリオで、普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)5%を維持することが合格の条件とされたのに対し、市場では同比率を9%に引き上げるとの見方が出ている。ただ、基準を厳格にすればそれだけ各行の資本不足額が膨らみ、公的資金による資本増強を行えば重債務国の財政はさらに圧迫されることになる。このためアナリストらは、「いつまでに、どの程度の資本増強を求めるのか」を早急に打ち出す必要があると指摘している。

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金融業界からは欧州委の提案に対して早くも批判の声が上がっている。ドイツ銀行連盟(BDB)のケマー事務局長は「資本増強策はソブリン債リスクの根本的な問題を解決するものではない」と指摘。配当の支給停止などを行えば資本の調達がさらに困難になり、かえって逆効果になりかねないと警告している。一方、英フィナンシャル・タイムズ紙によると、一部の大手行は従来よりも高い自己資本比率の達成を求められた場合、資本増強の代わりに資産や事業の売却で対応する方針を示唆している。同紙によると、大量の南欧国債を保有する仏銀大手BNPパリバやソシエテ・ジェネラルなどがこうした方向で検討に入っており、イタリア、スペイン、ドイツなどで追随の動きが広がる可能性があると指摘している。

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