2011/10/17

総合 –EUウオッチャー

欧州委が開発援助の新戦略発表、支援対象を絞り込み

この記事の要約

欧州委員会は13日、途上国の貧困撲滅を最大の目的とするEU開発援助政策の新たなアプローチをまとめた政策文書を発表した。世界全体の政府開発援助(ODA)の約半分を担うEUの開発援助を実効性のあるものにするため、政治・経済・ […]

欧州委員会は13日、途上国の貧困撲滅を最大の目的とするEU開発援助政策の新たなアプローチをまとめた政策文書を発表した。世界全体の政府開発援助(ODA)の約半分を担うEUの開発援助を実効性のあるものにするため、政治・経済・社会情勢の変化を踏まえて対象となる国・地域や事業分野を絞り込み、より効率的な資金配分を行う方針を掲げている。

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EUは世界最大のODA供与者で、EUレベルと各加盟国からの拠出を加えた2010年の実績は総額538億ユーロに上った。このうちEU予算からの拠出は約20%で、欧州委が配分先を決定している。EUは国連の「ミレニアム開発目標(MDG)」に沿って、アフリカを中心とする途上国の貧困問題に最も積極的に取り込んでいるが、不透明感を増す経済情勢、民間部門の積極的な関与、かつて支援対象だった一部新興国のODA供与者への転換など、開発援助を取り巻く環境が大きく変化している。欧州委はこうした現状を踏まえ、最も援助を必要としている国に対して最も効率的かつ効果的に支援を行うための戦略的アプローチを検討していた。

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欧州委は「変化に対応するための検討課題」と題した文書で、貧困対策のほかにガバナンスの向上、人権擁護、民主主義、男女平等、法による支配の促進などを開発援助の最優先事項と位置づけ、開発政策に関する対話、徹底した影響評価、キャパシティビルディング支援など途上国との「契約に基づくパートナーシップ」を強化することで、より効果的な支援が可能になると指摘している。そのうえで、途上国が独自に財源を確保し、開発援助への依存度を低下させるための道筋をつけることが財政支援の最大の目的と強調。財政支援プログラムを「良きガバナンスと開発のための契約」「セクター改革のための契約」「国家基盤確立のための契約」の3タイプに分類し、人権擁護や民主主義の推進、持続可能な農業やクリーンエネルギー政策、国家運営の基礎となる基本的な行政サービスなどに対して重点的に支援を行う方針を示している。

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欧州委のピエバルグス委員(開発担当)は声明で「EUは世界の開発援助の50%以上を占める最大の供与者だが、一連の援助は最も実効性のある形で実行されなければならない。最も援助を必要としている国を効率的かつ効果的に支援するため、急速に変化する世界の実情に合わせて優先度を見直す必要がある」と説明している。

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