2011/10/31

総合 –EUウオッチャー

EUが債務危機の包括的対策で合意、ギリシャ国債の債務5割減

この記事の要約

EUは26日に開いた加盟27カ国およびユーロ圏17カ国の首脳会議で、欧州の債務危機を解消するための包括的対策で合意した。焦点となっていたギリシャへの第2次支援について、同国の国債を保有する民間銀行に債務の50%削減を求め […]

EUは26日に開いた加盟27カ国およびユーロ圏17カ国の首脳会議で、欧州の債務危機を解消するための包括的対策で合意した。焦点となっていたギリシャへの第2次支援について、同国の国債を保有する民間銀行に債務の50%削減を求める。「欧州金融安定基金(EFSF)」に関しては、融資能力を4~5倍の約1兆ユーロに引き上げる。これにより、ギリシャを震源地とする債務危機の発生から2年を経て、ようやく総合的な対策がまとまった形となる。

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ギリシャは昨年5月にEUと国際通貨基金(IMF)から総額1,100億ユーロの緊急融資を取り付けたが、財政危機が一段と深刻化しているため、EUは7月に第2次支援として1,090億ユーロを追加融資することを決定した。条件として、ギリシャ国債を保有する民間銀行にも債務の一部棒引きによって負担させることになっていたが、負担規模をめぐる協議が難航。23日の首脳会議では結論を持ち越していた。

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合意によると、銀行は国債の元本の50%を削減する。削減率は当初予定の21%から大幅に引き上げられた。これに銀行側は難色を示していたが、ドイツのメルケル首相らが銀行業界のロビー団体である国際金融協会(IIF)のダラーラ専務理事を説得し、同日に受け入れで合意した。

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EUによると、国債残高の5割カットにより、ギリシャの2020年の累積債務は国内総生産(GDP)比120%となり、当初見込みの同180%から大幅に低下する。

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民間負担の決着を受けて決まった第2次支援の規模は1,000億ユーロ。民間負担が増えたことから、当初の額をわずかながら下回った。

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ユーロ圏の財政悪化国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロのEFSFについては、ギリシャのほかアイルランド、ポルトガルも融資対象となっており、残る融資枠は2,500億ユーロにとどまっている。首脳会議では財政不安に直面するスペイン、イタリアなどが新たに支援を要請する場合に備え、融資能力拡充を決めた。ただ、拡充のメカニズムについては結論に至らなかった。◇財政が悪化している国の国債の購入者への損失補償◇特別目的事業体(SPV)を設立し、中国、ブラジルをはじめとする新興国やIMFなどの出資を募る――という2つの策を併用し、レバレッジをかける方向で詳細を詰める。11月のユーロ圏財務相会合での最終決定を目指す。巨額の外貨準備を持つ中国の協力を取り付けることができるかどうかが、今後の最大の焦点となる。

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このほか首脳会議では、23日に打ち出していた域内銀行の資本増強を正式決定した。中核的自己資本比率を来年6月末までに9%まで引き上げる。EUが今年実施したストレステスト(健全性審査)で合格基準となっていた5~6%を大きく上回る水準だ。欧州銀行監督機構(EBA)が同日明らかにしたところによると、必要となる増資の規模は総額1,060億ユーロに達する見込み。国別ではギリシャの銀行が300億ユーロ、同スペインが260億ユーロ、同イタリアが148億ユーロの増資が必要になると推定している。各銀行は、資本増強を達成するまで株主配当、ボーナス支給の凍結を求められる。資本増強は、独自の資金調達が原則。それができない場合は各国政府が支援する。それでも基準を達成できない場合は、EFSFに支援を要請する形となる。

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EUは当初、包括的対策を今月17、18日にまとめる予定だったが、加盟国間の調整が進まず、予定を変更して23日に首脳会議を開催した。それでも詰めきれなかったことから、急きょ26日の会合を設定。協議は11時間に及び、27日未明に妥結にこぎ着けた。

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今回の合意を受けて、27日の欧州株式市場では、金融株を中心に株価が軒並み上昇。ユーロも対ドル、円で上昇に転じている。これを機に欧州や世界を大きく揺るがすユーロ圏の信用不安問題が収束に向かうかどうかが注目される。

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