2011/12/5

産業・貿易

エアバス向け補助金で是正措置、欧州委がWTO勧告を履行

この記事の要約

欧州委員会は1日、欧州航空機大手エアバスに対するEUの金融支援が違法な補助金にあたると結論づけた世界貿易機関(WTO)上級委員会の裁定を受け、同日までに同委の勧告を履行したことを明らかにした。是正措置の具体的な内容は公表 […]

欧州委員会は1日、欧州航空機大手エアバスに対するEUの金融支援が違法な補助金にあたると結論づけた世界貿易機関(WTO)上級委員会の裁定を受け、同日までに同委の勧告を履行したことを明らかにした。是正措置の具体的な内容は公表されていないが、欧州委のクランシー報道官は「一連の措置を通じ、EUはWTOの裁定で指摘されたあらゆる種類の補助金、あらゆる形の弊害、すべてのエアバス機種の問題に対処する」と述べた。ただ、申立国の米政府がEUの対応は不十分と判断した場合、WTOを舞台とするEU・米間の紛争はさらに長引き、EUからの輸入品に対する関税引き上げなどの報復措置が取られる可能性もある。

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WTO上級委は今年5月、エアバスが新型航空機の開発資金として英国、フランス、ドイツ、スペイン政府から低利融資の形で不公正な補助金を受け取り、最大のライバルである米大手航空機メーカーのボーイングに深刻な打撃を与えたと認定。EUに対して6カ月以内に是正措置を講じるよう勧告しており、その履行期限が12月1日だった。

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上級委はEU側の協定違反を認定する一方、エアバスが超大型旅客機「A380」の開発資金として英、独、スペイン政府から受けた「ローンチエイド」と呼ばれる融資に関しては、WTO協定で禁止された輸出補助金に当たるとの米側の主張を認めた紛争処理小委員会(パネル)の裁定は「誤り」との判断を示した。しかし、米政府とボーイングはEUに対し、過去の不正な補助金を撤回するだけでなく、将来にわたってエアバスに補助金を拠出しないよう求めており、欧州委が表明した「すべてのエアバス機種」にA380が含まれるかどうかが今後の焦点となる。

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米通商代表部(USTR)のカーク代表は、EUから提出された報告書の内容を吟味したうえで今後の対応を検討するとコメント。ボーイングは声明で「エアバスと関係国が市場をゆがめるローンチエイドの完全な撤廃を明確に証明することを期待する」と強調した。

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一方、EUは米政府によるボーイングの中型旅客機「787」(ドリームライナー)の開発支援がWTO協定に違反するとして提訴しており、WTOパネルはことし3月にEUの主張を大筋で認める最終報告をまとめた。現在、上級委で審理が行われており、来年2月-3月に最終結論が出る見通しだ。

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