2011/12/5

産業・貿易

漁業支援に7年で65億ユーロ、欧州委が新基金創設を提案

この記事の要約

欧州委員会は2日、EU共通漁業政策(CFP)を実行するための財政支援措置の新たな枠組みとなる「欧州海事漁業基金(EMFF)」の概要を発表した。2014-20年の7年間に総額65億ユーロを投じて環境・経済・社会面で持続可能 […]

欧州委員会は2日、EU共通漁業政策(CFP)を実行するための財政支援措置の新たな枠組みとなる「欧州海事漁業基金(EMFF)」の概要を発表した。2014-20年の7年間に総額65億ユーロを投じて環境・経済・社会面で持続可能な漁業を実現するためのプロジェクトを支援し、漁業部門の成長と雇用創出を図る。欧州議会と加盟国の承認を経て実施する。

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EUでは利用可能な資源量に対して漁獲能力が慢性的に過剰な状態にあり、加盟国はCFPに基づいて漁船の数、大きさ、操業日数などを規制している。EUはこうした操業規制や廃船を通じた構造改革の影響を和らげるための財政支援制度を設けており、EMFFは07-13年を対象期間とする欧州漁業基金「EFF」に代わる予算の枠組みとなる。

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欧州委は今年7月、2015年までに水産資源の乱獲をなくして持続可能な漁獲水準を確保することを目標に掲げたCFP改革案を打ち出した。EMFFは次期CFPを実行するための財政基盤となるもので、乱獲を防止して水産資源を保護し、生態系へのダメージが少ない漁法の導入を進めるためのインセンティブとして活用される。加盟国における漁業セクターの重要度に応じて予算が配分され、具体的にどのプロジェクトを支援の対象とするかは各国政府が決定する。欧州委は沖合養殖の奨励、水産加工・処理技術の開発支援、漁業者の起業支援、エコツーリズムの振興などを支援対象の具体例として挙げている。

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CFPに基づく財政支援では、これまで漁船を減らすための措置に多額の補助金が拠出されてきたが、技術の進歩による漁業の効率性向上などにより、減船の効果が打ち消されているのが実情。欧州委は「過剰漁獲能力を削減するため、減船を奨励する方向で財政支援を行ってきたが、うまく機能しなかった」と指摘。EMFFでは漁船のスクラップに対する補助金の拠出を打ち切る方針を打ち出した。欧州委はこのほか、漁船の建造や漁獲能力の向上につながる技術の導入も支援対象から除外することや、支援を受けている漁業者がEUルールを順守していないことが発覚した場合、ただちに補助金を取り消すことなどを提案している。

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