2011/12/5

競争法

銀行公的支援の規制緩和を延長、信用不安対策で欧州委決定

この記事の要約

欧州委員会は1日、EU域内の銀行に対する公的支援の規制緩和を延長すると発表した。2008年のリーマンショックを機に特例として導入された同措置は、年内で終了する予定だったが、ユーロ圏の信用不安拡大によって銀行の経営環境が悪 […]

欧州委員会は1日、EU域内の銀行に対する公的支援の規制緩和を延長すると発表した。2008年のリーマンショックを機に特例として導入された同措置は、年内で終了する予定だったが、ユーロ圏の信用不安拡大によって銀行の経営環境が悪化していることから、市場環境が好転するまで無期限で継続する。

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EUでは民間企業への公的救済を競争政策上の観点から厳しく制限している。しかし、リーマンショックに端を発した金融危機で域内銀行が大きな打撃を受けたことから、各国政府による銀行救済に柔軟に対応することを決定。◇他の加盟国の銀行との競争で有利になるような救済は認めない◇救済は必要な範囲内にとどめ、適用も一時的なものとする◇対象銀行は資産売却などによる経営再建を進める――といったガイドラインを定め、基準を満たすケースでは救済を容認している。これに基づいて各国は資本注入、信用保証などの形で銀行を支援。08年10月から2010年末までの支援総額は1兆6,000万ユーロ(約167兆円)に上る。

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欧州委は信用不安の拡大で銀行の資金繰りが一段と厳しくなっていることから、同措置の適用延長を決めた。10月のEU首脳会議で合意した信用不安の包括的対策で、域内銀行の資本増強を決め、中核的自己資本比率を来年6月末までに9%まで引き上げる方針を打ち出したことから、一層の公的支援が必要になることも考慮した。

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欧州委はガイドラインの見直しも決定。支援は対象銀行の資本不足が債務危機に起因し、大規模なリストラなしで長期的に存続可能な状況にあることが条件となる。支援規模は、銀行が保有する国債の評価損の範囲内にとどめる。リーマンショックによる金融危機対策から、完全に信用不安対策に特化した格好となる。

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このほか、銀行による期間1~5年の社債(担保付き債券=カバードボンドの場合は7年まで)発行を政府が信用保証を供与して支援する場合の保証料について、国家の信用力に応じて決めることも盛り込んだ。これにより、信用力が高いドイツの銀行はこれまでより高い保証料を支払い、イタリアなどの銀行は低めに抑えられることになる。新ガイドラインは来年1月1日から適用される。

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