2011/12/12

産業・貿易

域内銀行の資本不足は1147億ユーロ、国債価格の下落受けEBAが再査定

この記事の要約

欧州銀行監督局(EBA)は8日、域内銀行の財務状況を再査定した結果、自己資本比率の目標を達成するために必要な資本増強の規模が総額1,147億ユーロに達したと発表した。10月末にまとめた暫定値は1,064億ユーロだったが、 […]

欧州銀行監督局(EBA)は8日、域内銀行の財務状況を再査定した結果、自己資本比率の目標を達成するために必要な資本増強の規模が総額1,147億ユーロに達したと発表した。10月末にまとめた暫定値は1,064億ユーロだったが、9月末時点の国債価格を反映させたところ、不足額が当初の試算に比べて8%拡大した。資本不足が指摘された銀行は、来年1月20日までにEBAに資本増強計画を提出し、6月末までに増強を完了させる必要がある。

\

市場では価格が急落した南欧諸国などの国債を大量に保有する銀行で多額の評価損が発生し、金融システム全体に悪影響が及ぶとの懸念が強まっている。このためEUは10月末の首脳会議で、普通株と内部留保で構成する「狭義の中核的自己資本比率(Tier 1)」を来年6月までに9%に引き上げることを銀行に求める資本増強策を決定。EBAが正確な資本不足額を算出するため、域内の71行を対象に資本の再査定を行った。

\

これによると、資本不足が指摘された銀行は合わせて31行。国別の資本不足額はギリシャが300億ユーロと最も多く、スペイン(262億ユーロ)、イタリア(154億ユーロ)と続いている。ドイツも暫定値の52億ユーロを大幅に上回る131億ユーロに達し、市場では53億ユーロの資本増強を求められるコメルツ銀行(現在半国有化されている)が国有化されるとの見方も出ている。

\

資本増強の方法は増資のほか、配当や賞与の削減、非中核事業の売却などが中心になる。自力での資金調達が困難な銀行には各国政府が支援を行い、それでも基準を達成できない場合は欧州金融安定基金(E FSF)に支援を要請する形になる。一方、基準達成のために貸し渋りや貸しはがしなどで分母となる総資産を減らす動きが広がるのを防ぐため、EBAは融資削減による自己資本比率の押し上げ分を資本増強策として認めない方針を打ち出している。

\