2011/12/19

総合 –EUウオッチャー

EUが財政新条約の原案提示、ユーロ圏9カ国の批准で発効

この記事の要約

EUは16日、英国を除くEU26カ国が参加を予定している財政規律強化に向けた新条約の原案を各国に送付した。ユーロ圏9カ国が批准した時点で発効とすることなどを柱とする内容。来年3月の署名を目指し、今週から協議に入る。\ 新 […]

EUは16日、英国を除くEU26カ国が参加を予定している財政規律強化に向けた新条約の原案を各国に送付した。ユーロ圏9カ国が批准した時点で発効とすることなどを柱とする内容。来年3月の署名を目指し、今週から協議に入る。

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新条約は、先のEU首脳会議で合意したもの。ギリシャに端を発した債務危機の再発を防止するため、財政規律に違反した国への自動的な制裁発動、各国予算への欧州委員会の介入などを盛り込んだ新財政協定を結ぶという内容だ。

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ロイター通信などによると、原案では発効手続きについて、ユーロ圏17カ国の過半数に当たる9カ国による批准をもって発効すると規定。具体的な中身に関しては、規律違反国への自動制裁、欧州委の予算介入に加えて◇各国が財政均衡の維持(財政赤字をGDP比0.5%以内に抑える)を憲法や基本法に明文化する◇規律違反国を他の国が欧州司法裁判所に提訴できるようにする――ことなどが盛り込まれた。

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大きなポイントとなっているのが、発効手続きの簡素化。EUでは全加盟国による批准が条約発効の原則となっている。しかし、今回は一部の国の批准難航が発効を大幅に遅らせることを防ぐため、異例の対応を行う。信用不安解消に向け、早期の発効を優先させた格好だ。

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加盟国は20日に条約制定の協議を開始。1月末までの合意を目指し、調整を進める。

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財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることなどを義務付けるEUの財政規律(安定成長協定)をめぐっては、違反国への制裁を加盟国の過半数が反対しない限り発動することや、経常収支などマクロ経済面での不均衡も監視・制裁対象とすることなどを柱とする改革が13日に施行。来年1月から新ルールが適用される。さらに欧州委は11月、新たな信用不安対策として提案した「ユーロ共同債」構想の前提として、ユーロ参加国に対する財政監視強化案を発表。◇ユーロ圏各国が次年度予算案を議会に先立って欧州委に提示し、審査を受ける◇財政危機国にEUと国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請するよう勧告する権限をEUに与える――ことを提案。年明けに審議が始まる。

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26カ国が参加する新条約は、規律違反国への制裁、欧州委の予算介入でこれらを踏襲するが、条約化することで実効性を高め、信用不安で揺れる市場の信頼の回復を図る。また、各国に財政均衡を憲法に明文化させることで、規律順守をさらに徹底する。

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条約制定、英も参加

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新条約を提唱した独仏は当初、EU基本条約を改正する形で財政規律を強化したい考えだった。しかし、英キャメロン首相が首脳会議で、国益に反するという理由で参加を拒否したことから断念し、同国を除く26カ国が政府間協定を結ぶ方式での新条約締結に変更を余儀なくされた経緯がある。

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一方、EUは同日、条約に加わらない英国も条約制定の協議にオブザーバーとして参加すると発表した。EUの参加要請に英国が応じたもので、同国の孤立を避ける狙いがあるとみられる。また、英国がEU基本条約の枠外にある新条約に欧州委、欧州司法裁などEU機関が関わることを問題視し、提訴する構えを示していたことも考慮したもよう。条約制定に英国を交えることで、事前に同問題を解決し、制定後に法的問題が持ち上がるのを防ぎたい考えだ。このため、協議では条約に加わらない英国が大きなカギを握ることが予想される。

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