2011/12/19

産業・貿易

欧州議会、モロッコとの漁業協定延長を否決

この記事の要約

欧州議会は14日の本会議で、EUとモロッコの漁業協定延長を求めた欧州委員会の提案を賛成296、反対326、棄権58の反対多数で否決した。現行協定が経済性や資源保護の観点から問題が多いうえ、紛争地域である西サハラ住民の利益 […]

欧州議会は14日の本会議で、EUとモロッコの漁業協定延長を求めた欧州委員会の提案を賛成296、反対326、棄権58の反対多数で否決した。現行協定が経済性や資源保護の観点から問題が多いうえ、紛争地域である西サハラ住民の利益が考慮されていないため。否決を受けて現行協定は直ちに失効し、EUの漁船はモロッコと西サハラ沖合での操業ができなくなる。

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今回争点となったのは、EUとモロッコが2007年に締結した漁業協定。EUは同協定に基づき、年間およそ3,600万ユーロをモロッコ側に支払い、モロッコ水域での漁業操業権を得ているが、操業が認められる水域に紛争地域である西サハラ沖合が含まれることが問題となってきた。西サハラは旧スペイン植民地で、1975年以来モロッコが併合。これに対しモロッコからの独立を求めるポリサリオ戦線が反旗を翻した。国連の仲介で91年に休戦したが、その後の交渉でも政治的な決着はできていない。

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欧州議会は西サハラをめぐる法的問題に言及し、「漁業協定の当面の問題は、協定が現地住民に直接利益をもたらすものであるかどうかだ」と、西サハラ住民(サハラウィ)の利益保護の必要性を強調。さらに、現行協定の内容ではEU側の経済的メリットが少ないばかりでなく、カレイやヒラメなど底魚の乱獲が進み、EUからの資金が現地漁業の発展に有効活用される保証もないとして、協定の延長は「受け入れがたい」と結論づけた。そのうえで欧州委員会に対し、経済、環境、社会的に持続可能な互恵的内容の新たな取り決めを提案するよう求めた。

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モロッコ外務省は欧州議会の決定を受けて遺憾の意を表明するとともに、「EUとモロッコの将来の漁業関係に深刻な影響をもたらす」と警告。自国水域で操業するEU船籍の漁船に対し、即時に退去するよう求めた。

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