2012/1/16

総合 –EUウオッチャー

財政規律違反でハンガリーに圧力、欧州委が制裁を勧告

この記事の要約

欧州委員会は11日、ハンガリーの財政健全化に向けた取り組みが不十分だとして、EU財務相理事会に同国への制裁措置発動を勧告する方針を明らかにした。加盟国に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務づけた安定 […]

欧州委員会は11日、ハンガリーの財政健全化に向けた取り組みが不十分だとして、EU財務相理事会に同国への制裁措置発動を勧告する方針を明らかにした。加盟国に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることを義務づけた安定・成長協定に基づく手続きの一環で、24日の財務相理で欧州委の勧告が承認される見通し。欧州委は補助金の支給凍結などを示唆しており、実施された場合、財政規律違反による初の制裁となる。

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EUは加盟国の財政悪化が深刻な信用不安を招いたとの反省に立ち、財政規律強化策の一環として昨年末に安定・成長協定を改定。欧州委が協定違反国に対して制裁が必要と判断した場合、加盟国の過半数が反対しなければ自動的に制裁が発動される制度を導入した。

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欧州委によると、ハンガリーの2011-12年の財政赤字はGDP比で3%以内に収まる見通しだが、これは民間の年金基金を国有化するなどの「一時的な対応」によるもので、こうした措置がとられなければ財政赤字はGDP比6%に達していたと指摘。13年には再び財政赤字が3%を超えるとの見方を示し、「ハンガリー政府は財政再建に向けた対応を怠った」と結論づけた。レーン副委員長(経済・通貨・ユーロ担当)は同国政府が緊縮財政への取り組みを強化しない場合、地域開発のためのEU基金の支給を凍結するなどの制裁を科すことになると警告している。

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ハンガリー政府は今回の動きを受けて声明を発表し、「ハンガリーは財政赤字の削減に取り組んでおり、GDP比3%未満という財政規律を達成している」と強調。そのうえで「EUからのあらゆる提案を歓迎する」とし、制裁回避に向けて対応策を検討する姿勢を示した。

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欧州委はポーランドと並んでベルギー、キプロス、マルタ、ポーランドについても財政状況の分析を進めていたが、4カ国は「有効な対策を講じた」と評価され、制裁を免れた。

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一方、欧州委は同日、ハンガリーで昨年末に成立した中央銀行改革法を含む新法がEU法に違反するおそれがあるとの見方を示し、同国が適切な対応をとらない場合は法的措置を検討すると警告した。17日の次回会合で結論を出す方針で、ハンガリーは財政規律違反と同様に厳しい対応を迫られそうだ。

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オルバン政権は公共機関やメディアに対する政府の影響力拡大を図るための政策を推し進めており、欧州委は中銀などの独立性を脅かす新法がEU法に抵触しないか調査を進めている。中銀改革法は総裁の権限を縮小して副総裁の任命権を政府に委譲し、副総裁を2人から3人に増やすことや、政策金利を決定する委員会メンバーを現在の7人から最大9人に増員することなどを柱とする内容。欧州中央銀行(ECB)は中銀の政策決定で政府の影響力が強まると指摘し、法制化に強く反対していた。

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欧州委はこのほか、1月1日付で施行された新憲法も問題視しており、特に裁判官と検察官の定年を強制的に70歳から62歳に引き下げる規定や、データ保護当局の権限を縮小する内容の規定に対して強い懸念を表明している。

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