2012/3/12

産業・貿易

GM作物栽培認可めぐる調整難航、加盟国への権限委譲で合意できず

この記事の要約

EU加盟国は9日開いた環境相理事会で、遺伝子組み換え(GM)作物の栽培認可に関する裁量権を各国政府に与える案について協議したが、ドイツ、フランス、英国などの反対で合意することができなかった。EU議長国のデンマークは引き続 […]

EU加盟国は9日開いた環境相理事会で、遺伝子組み換え(GM)作物の栽培認可に関する裁量権を各国政府に与える案について協議したが、ドイツ、フランス、英国などの反対で合意することができなかった。EU議長国のデンマークは引き続き各国との意見調整を進め、任期が終了する6月末までの合意形成を目指す意向を示している。しかし、加盟国に栽培認可の権限を委譲すればEU共通農業政策(CAP)の根幹が揺らぐといった声も根強く、今年前半に合意できない場合は認可手続きに関する議論が振り出しに戻る可能性もある。

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EU内ではGM作物をめぐる加盟国の意見対立が続いており、新規の栽培認可が停滞しているうえ、EUが認可したGM作物に対する実際の対応も国によってばらつきがある。欧州委はこうした現状を踏まえ、2010年7月に加盟国がそれぞれの実情に応じて栽培認可の是非を判断できる仕組みを提案した。厳格な安全性評価に基づくGM作物の認可制度は維持したうえで、EUが科学的に安全と認定した品種に関しても、倫理面や社会・経済面への影響などを考慮して加盟国が独自に国内での栽培を禁止または制限できるようにするという内容で、認可手続きを迅速化して非GM作物とGM作物の共存を推進し、域内農業の競争力を強化する狙いがある。しかし、GM作物の栽培を認可した国と禁止した国が隣接する場合の汚染防止策などをめぐって調整が進まず、加盟国からは各国政府に難問を突きつけて責任を押しつけることは誤りだといった批判が出ている。

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議長国デンマークは事態を打開するため、栽培認可の是非は加盟国が独自に判断できるものの、EUレベルで栽培が認可されたGM作物の流通・販売を阻止することはできないとした欧州委案に修正を加えた妥協案を提示した。EU域内でGM作物の栽培認可を取得したい企業と加盟国が事前に協議を行い、栽培を認めない国では当該品種の販売も行わない代わりに、それ以外の国では栽培できるようにし、問題が生じた場合は各国が科学的データなどに基づいて国内での栽培を禁止または制限できる仕組みを導入する、という内容だ。

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理事会で妥協案に反対票を投じた英国のスペルマン環境相は、GM作物を扱う企業と加盟国の合意を基に認可手続きを進める点は評価できるとしたうえで、いったん栽培を認めた国が禁止措置を講じる場合、決定を正当化する十分な根拠を示すことは極めて困難で、世界貿易機関(WTO)に提訴される可能性が高いと指摘している。

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