2012/4/16

環境・通信・その他

供給過剰で排出権価格が過去最低に、11年のCO2排出量は2.4%減

この記事の要約

欧州委員会が2日公表した統計で、EU域内の事業所と発電所からの2011年の二酸化炭素(CO2)排出量が市場の予想を大幅に下回ったことが明らかになった。これを受けて排出権価格は同日、史上最安値を更新した。欧州市場では主に景 […]

欧州委員会が2日公表した統計で、EU域内の事業所と発電所からの2011年の二酸化炭素(CO2)排出量が市場の予想を大幅に下回ったことが明らかになった。これを受けて排出権価格は同日、史上最安値を更新した。欧州市場では主に景気後退の影響で排出枠の余剰が生じ、供給過剰による排出権価格の下落傾向が続いている。アナリストらの間では2020年頃まで排出権の供給過剰と排出権価格の下落が続くとの見方が有力で、EUが早急に介入しない限り、企業に低炭素技術への投資を促すことは難しいといった意見が出ている。

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欧州委が公表した最新の統計(暫定値)によると、EU排出量取引制度(ETS)の対象となっている事業所と発電所から11年に排出されたCO2は約17億トンで、前年の水準を2.4%下回った。市場では景気回復やドイツの脱原発政策を背景に火力発電が大幅に増加し、経済危機の影響で生産活動が停滞した前年に比べてCO2排出量が増加するとの見方が有力で、ブルームバーグ通信がまとめたアナリスト7人の予想平均は前年比0.7%増となっていた。

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ロンドン市場では2日、CO2 1トン当たりの排出権価格が前日の終値を14%下回る6.14ユーロとなり、取引開始以来の最安値を記録した。欧州の排出権価格は過去1年間に60%以上も下落したことになる。

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トムソン・ロイター傘下の情報サービス会社ポイント・カーボンの上級アナリストYan Qin氏は、暖冬で電力消費が抑えられたことに加え、風力と太陽光を中心とする再生可能エネルギー発電が予想以上に拡大したことがCO2の排出削減につながったと分析している。バークレイズ・キャピタルのシコルスキー氏によると、11年の再生可能エネルギー発電は域内全体で予想の1.5倍に当たる30ギガワットに上り、過去2年間で累計50ギガワットに達した。同氏は現在のペースで再生可能エネルギー発電が拡大し、景気が緩やかな回復基調を維持した場合、排出権の供給過剰が続いて排出権価格の下落が予想以上に長期化すると指摘。EUが介入して各事業者に割り当てた排出上限を引き下げない限り、「少なくとも今後5年以内に排出権価格が1トン当たり15ユーロを超えることはない」との見方を示している。

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