2012/4/30

産業・貿易

製薬大手と後発薬メーカーが対立、EUの偽造薬対策めぐり

この記事の要約

偽造医薬品対策の一環としてEUが導入を計画している医薬品の包装に関する新指令をめぐり、大手製薬会社と後発医薬品メーカーの対立が表面化している。欧州委員会は域内における偽造医薬品の流通を阻止するため、2016年からサプライ […]

偽造医薬品対策の一環としてEUが導入を計画している医薬品の包装に関する新指令をめぐり、大手製薬会社と後発医薬品メーカーの対立が表面化している。欧州委員会は域内における偽造医薬品の流通を阻止するため、2016年からサプライチェーンの全過程でパッケージごとの追跡を可能にする識別コードがついた不正開封防止包装の導入をメーカーに義務づける方針を打ち出しているが、後発医薬品メーカーは新ルールに伴う追加的なコスト負担に強く反発し、規制強化の恩恵を受ける大手製薬会社に適用を限定すべきだと主張している。

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世界保健機関(WHO)によると、欧米や日本など先進国では市場に流通する偽造医薬品の割合は1%に満たないが、世界的にみると主にインターネットを介した通信販売で偽造品が広く出回り、摂取による健康被害が深刻な問題になっている。また今月初めには、スイスの製薬大手ロシュの抗がん剤「アバスチン」の偽造品が英国とトルコ経由で米国に流入したことが判明。同社や英グラクソ・スミスクライン、米ファイザーなどはEUに対して対策を強化するよう求めており、欧州委の提案を歓迎している。

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一方、後発医薬品メーカーの業界団体「欧州後発医薬品協会(EGA)」は、もともと低価格で販売されるジェネリック医薬品を偽造しても業者にとってメリットはほとんどないと指摘し、新規制によって生じるコスト負担はブランド薬を製造・販売する大手メーカーが分担すべきだと主張している。EGAのペリー事務局長はロイター通信との電話インタビューで、「域内市場では後発医薬品の偽造品が発見されたケースは1件もない」と強調。偽造業者が標的にしているのは高価なブランド薬であることから、一律の規制ではなく「リスクベースのアプローチ」を取るべきだと指摘し、「大手製薬メーカーは追加的なコスト負担を吸収できるはずだ」と語った。

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欧州医薬品市場における後発医薬品のシェアは数量ベースで約50%に上るが、売上高では16%にとどまる。EGAは新たな包装ルールが導入された場合、後発薬メーカーの費用負担は業界全体でおよそ10億ユーロに上ると試算している。

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これに対し、大手製薬会社の業界団体「欧州製薬団体連合会(EFPIA)」のベルイストローム事務局長は、「これまで偽造品が発覚していないと理由で後発医薬品メーカーを規制の対象から除外するのは論理的でない。費用負担をどのように分担するかは別として、卸売業者を含めた業界全体がスキームに参加するべきだ」と指摘している。

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