2012/5/14

総合 –EUウオッチャー

ギリシャの連立工作不調、6月に再選挙へ

この記事の要約

ギリシャで総選挙後の連立協議が行き詰まっており、6月の再選挙実施が確実となってきた。これによって政治の空白が生じ、財政再建が宙に浮くことになり、債務危機が深まるのは避けられない情勢だ。\ 6日に実施された議会(定数300 […]

ギリシャで総選挙後の連立協議が行き詰まっており、6月の再選挙実施が確実となってきた。これによって政治の空白が生じ、財政再建が宙に浮くことになり、債務危機が深まるのは避けられない情勢だ。

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6日に実施された議会(定数300選挙では、財政再建を推進する連立与党の全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)と新民主主義党が、厳しい緊縮策に対する国民の不満を受けて惨敗。新民主主義党は108議席で第1党となったものの、改選前から大きく議席を減らした。第1党だったPASOKは41議席で第3党に後退。両党を合わせても149議席と、過半数の151に届かなかった。昨年11月に発足した欧州中央銀行(ECB)前副総裁のルカス・パパデモス首相率いる暫定政権がEUに金融支援の条件として約束した財政再建策に国民がノーを突きつけた格好だ。

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代わって躍進したのが、反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)。52議席を獲得して、第2党に躍り出た。これまで議席がなかったネオナチ政党の極右「黄金の夜明け」も21議席を確保した。

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単独で過半数を確保した党がなかったことから、第1党・新民主主義党のサマラス党首は7日、パプリアス大統領から組閣要請を受けて、「黄金の夜明け」を除く各党との連立工作に着手。焦点の緊縮策について、EUとの約束を守らなければ支援が打ち切られるほか、ユーロ離脱に追い込まれかねないとして理解を求めたが、PASOK以外の支持を取り付けることができず、組閣を断念した。

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代わって第2党SYRIZAのツィプラス党首が9日、連立工作に入ったが、EUとの財政再建合意の破棄を求める同党とPASOK、新民主主義党の溝が埋まらず失敗。続いてPASOKのベニゼロス党首が、新民主主義党にSYRIZA、第7党(19議席)の民主左派(19議席)を加えた挙国一致内閣の形成に向けた工作に着手したものの、SYRIZAは拒否。民主左派は反緊縮派であるが、財政再建に一定の理解を示し、緩やかな見直しを条件に連立に加わる意向を示していることから、3党連立政権発足への期待が高まった。しかし、同党はPASOK、新民主主義党だけとの連立は拒み、同じ左派のSYRIZAの参加を条件としていたことから、これも実現しなかった。

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これを受けてパプリアス大統領は13日、第1~3党の党首を招集して連立政権発足への説得を試みたが進展はなかった。大統領は14日に小政党の党首を招いて、挙国一致政権発足への協力を要請する見通しだが、組閣期限の17日までに何らかの連立工作が成功する可能性は薄く、憲法の規定による再選挙の実施が濃厚となってきた。

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6月の実施が見込まれる再選挙では、SYRIZAが勢いをかって第1党に躍り出て、反緊縮派による連立政権が発足する可能性がある。その場合、政治の空白には終止符が打たれるものの、財政再建計画の見直しをめぐって政府とEUが対立するのは必至で、ギリシャ情勢の混迷は続くことになる。

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