2012/5/14

産業・貿易

EUがアルゼンチンに対抗策、石油会社の国有化問題で

この記事の要約

アルゼンチン政府が先月、スペインの大手石油会社レプソル傘下のYPFを国有化する計画を打ち出した問題で、欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は7日、EUとして近く同国への対抗策を講じる方針を明らかにした。対抗策の具体的な内 […]

アルゼンチン政府が先月、スペインの大手石油会社レプソル傘下のYPFを国有化する計画を打ち出した問題で、欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は7日、EUとして近く同国への対抗策を講じる方針を明らかにした。対抗策の具体的な内容には言及していないが、EU はアルゼンチンが今年2月に導入した輸入許可制度が不当な輸入制限にあたるとして批判を強めており、世界貿易機関(WTO)に提訴する公算が大きい。アルゼンチンに続いてボリビア政府も今月1日、スペインの送電会社レッド・エレクトリカの現地子会社TdEを国有化する方針を打ち出すなど、南米諸国で保護主義的な動きが広がっており、EU、日本、米国などは警戒感を強めている。

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YPFはもともと国営企業だったが、1990年代に段階的に民営化され、現在はレプソルが同社の株式57.4%を保有している。アルゼンチンでは90年代後半から石油や天然ガスの生産量が減少傾向をたどっており、液化天然ガス(LNG)などの燃料輸入が大幅に拡大して貿易収支の悪化を招いている。フェルナンデス大統領はレプソルがYP Fへの投資を怠ったことが同社の生産低迷につながったと批判し、先月半ばに天然資源の管理を強化する政策の一環として、政府がYPFの株式51%を取得する計画を発表。今月3日までに上下両院でYPFを国有化するための法案が可決され、近く大統領が署名する見通しとなっている。

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デフフト委員は7日にブリュッセルで開催されたEU・アルゼンチン間の課題をテーマとする国際会議で講演を行い、保護主義を強める南米諸国の政策を受け、EU内で同地域の投資・ビジネス環境に対する懸念が高まっていると警告。国内の輸入業者に対して取引の内容を事前に公共歳入連邦管理庁に登録することを義務づけたアルゼンチンの輸入許可制度や、ボリビア政府が打ち出したTdEの国有化計画が域内の企業に直接影響を及ぼしていると指摘したうえで、「レプソルをめぐるアルゼンチン側の動きを受けて、EUとして近く対抗策を講じることになる」と述べた。

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こうしたなか、レプソルはアルゼンチン政府の決定を不服とし、補償金を求めて世界銀行の国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴する意向を表明している。また、スペイン政府はアルゼンチンに対する報復措置として、同国からのバイオディーゼルの輸入を大幅に削減する方針を打ち出している。

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