2012/5/21

総合 –EUウオッチャー

ギリシャの再選挙実施決定、事実上のユーロ離脱めぐる国民投票に

この記事の要約

ギリシャで総選挙後に続けられていた連立協議が不調に終わり、6月17日に再選挙が行われる。躍進した財政緊縮策に反対する勢力がさらに議席を増やし、反緊縮派の連立政権が発足すれば同国のユーロ離脱を招くとの懸念が強まる中、緊縮推 […]

ギリシャで総選挙後に続けられていた連立協議が不調に終わり、6月17日に再選挙が行われる。躍進した財政緊縮策に反対する勢力がさらに議席を増やし、反緊縮派の連立政権が発足すれば同国のユーロ離脱を招くとの懸念が強まる中、緊縮推進派の旧与党が劣勢を覆しつつあるが、予断を許さない状況だ。

\

EUと国際通貨基金(IMF)に金融支援の条件として約束した厳しい財政緊縮策の推進の可否が焦点となった6日の議会選挙では、与党の新民主主義党、全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)が大敗し、反緊縮を掲げる急進左派連合(SYRIZA)が第2党に躍進。PASOKは第1党から3党に転落した。新民主主義党は第1党となったが、PASOKと合わせても過半数にわずかに届かなかった。

\

単独で過半数に達した党がなかったことから開始された連立協議は当初、新民主主義党、PASOK、SYRIZAを軸に行われたが、いずれも失敗。パプリアス大統領が13日から仲介に乗り出し、パパデモス首相率いる現在の暫定政権と同様の実務者による内閣の発足を提案したが、SYRIZAなどが拒否して実現に至らず、大統領は15日に協議継続を断念した。

\

これを受けて17日、国家評議会のピクラメノス議長を首班とする選挙管理内閣が発足。パプリアス大統領が改選されたばかりの議会を19日に解散し、6月17日の再選挙実施が正式に決まった。

\

再選挙で反緊縮派の連立政権が樹立されれば、新政府はEUに財政再建計画の見直しを求めることになるが、これが受け入れられないのは確実。新政権が強硬姿勢を崩さなければEU、IMFからの金融支援が打ち切られる恐れがあるほか、ユーロ離脱も現実味を帯びてくる。

\

EUはギリシャのユーロ離脱はあり得ないとしており、15日に就任した仏オランド新大統領と独メルケル首相は同日夜の両首脳会談で、ギリシャのユーロ圏残留を目指す考えで一致した。

\

しかし、欧州委員会のデフフト欧州委員(通商担当)は18日、ベルギー紙「デ・スタンダール」に対して、欧州委と欧州中央銀行(ECB)が「ギリシャで偶発的事態が生じることを想定し、準備を進めている」と述べ、EU高官として初めてユーロ離脱の可能性に言及。ギリシャ国内では連立協議が失敗し、再選挙実施が確定してから、同国がユーロ圏から外れ、旧通貨ドラクマが復活すれば、同通貨の価値が急落すると懸念する市民が銀行からユーロを引き出す動きが加速している。パプリアス大統領は14日夜、同日までに引き出された預金が7億ユーロに達したことを明らかにした。

\

こうした状況下で、再選挙は緊縮策よりもユーロ離脱の可否を問う国民投票の様相を呈し始めている。ギリシャ国民は厳しい緊縮策に猛反発する一方で、同国のユーロ離脱は望んでいないことから、この流れは旧与党にとって追い風だ。再選挙確定直後の世論調査では、反緊縮派のSYRIZAが第1党に躍り出る勢いだったが、18日発表の調査では新民主主義党が支持率26.1%でトップ。SYRIZAは23.7%で2位に後退した。新民主主義党と14.9%で3位のPASOKを合わせた予想議席は過半数を超えた。ただ、ギリシャ政治アナリストのジョン・ルリス氏は「新民主主義党は熱烈な支持とは程遠く、情勢は流動的だ。再選挙の結果は、各党がどれだけミスを抑えるかによって左右される」と分析している。

\