2012/5/14

産業・貿易

有害化学物質の規制強化可決、輸出入手続き厳格化

この記事の要約

欧州議会は10日の本会議で、危険な化学物質の輸出入手続きに関するEU規則の改正案を賛成多数で可決した。EUは先進国で使用が禁止または制限されている有害化学物質が途上国にむやみに輸出され、人の健康や環境に被害が及ぶ事態を防 […]

欧州議会は10日の本会議で、危険な化学物質の輸出入手続きに関するEU規則の改正案を賛成多数で可決した。EUは先進国で使用が禁止または制限されている有害化学物質が途上国にむやみに輸出され、人の健康や環境に被害が及ぶ事態を防ぐための「ロッテルダム条約(PIC条約)」に基づき、「危険化学品の輸出入に関する規則」を定めて農薬などの輸出を規制しているが、輸入国から一定期間内に事前同意が得られない場合の手続きについて厳格なルールを導入し、安全網を強化する。今後、EU閣僚理事会で改正案について検討する。

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1998年に採択された国連のロッテルダム条約(正式名称:「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質および駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意(PIC )手続きに関するロッテルダム条約」)は、有害化学物質の輸出にあたり、輸入国から事前に同意を得ることを求めるもので、現在40種類の化学物質が対象品目に指定されている。締約国は対象物質の輸入に同意するかどうかの意思を事前に事務局に登録し、輸出国は自国の輸出業者が確実に輸入国の決定に従うよう、必要な措置を取ることが義務づけられている。EUは同条約を実施するため、2008年に危険化学品の輸出入規則を定め、域内の事業者に当局への届出と取扱い物質の有害性・危険性に関する情報の提供を義務づけている。

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EUのPIC規制では域内で使用が禁止または厳しく制限されている物質を輸出する場合、輸入国に対して毎年、必要な情報を添付した輸出通知を行って輸入意思を確認することになっているが、欧州委員会によると、輸入国から回答が得られないケースがおよそ30%に上る。欧州委はこうした現状を踏まえ、輸入国で当該化学品が「許可・登録・認可」されていれば、通知から60日以内に回答がない場合でも輸出手続きを進めることができるようにすることを提案していた。

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欧州議会はこれに対し、輸入国から回答がない場合に域内からの輸出を認めるための条件として◇最近5年間に相手国が当該化学品を輸入したことを証明する公式文書の提出◇予定される用途での当該化学品の使用が輸入国で禁止または制限されていないこと◇当該化学品がロッテルダム条約とEU規則の禁止品目リストに含まれていない――の3項目を追加した修正案を可決した。修正案にはこのほか、ロッテルダム条約で規制対象になっている発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR)物質と、難分解性・生体蓄積性・毒性(PBT)物質に関しては、事前の同意がない限り輸出を全面的に禁止するルールが盛り込まれている。

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