2012/5/21

産業・貿易

銀行の自己資本規制で合意、資本バッファー最大3%に

この記事の要約

EU加盟国は15日の財務相理事会で、金融危機の再発防止に向けた国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」に基づく新たな規制案の内容で合意した。加盟国の金融当局が独自の判断で、自国の銀行に対してEU基準を超える資本の上積みを求める […]

EU加盟国は15日の財務相理事会で、金融危機の再発防止に向けた国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」に基づく新たな規制案の内容で合意した。加盟国の金融当局が独自の判断で、自国の銀行に対してEU基準を超える資本の上積みを求めることができるようにする。月内に欧州議会との協議に入り、バーゼルⅢの段階的導入が始まる2013年1月の新ルール導入を目指す。

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バーゼルⅢは国際的に業務展開する銀行に対し、普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を現在の2%から7%まで引き上げることを求めている。欧州委員会は昨年7月、バーゼルⅢに沿ってコアTier1比率を19年までに7%以上とすることを域内の全銀行に義務づけることを柱とする新たな規制案をまとめ、加盟国による協議が続いていた。

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国際金融センターのポジションを堅持したい英国は、より厳格な規制が必要との立場を崩さず、各国の金融当局にEU基準より高い自己資本比率を設定できる裁量権を与えるべきだと主張。しかし、英国が他の国より厳しい規制を導入した場合、同国に拠点を置く銀行が自己資本比率を維持するため、他のEU諸国向けの融資を縮小するのではないかといった懸念が広がり、「システミックリスク・バッファー」と呼ばれる資本の上積みをめぐって加盟国間の意見調整が難航していた。

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財務相理で合意した規制案によると、域内の全銀行を対象に、コアTier1比率を現在の2%から15年までに4.5%、19年には7%までに引き上げる。焦点の資本バッファーに関しては、各国当局がそれぞれの権限で、自国の銀行に対して最大3%の資本の上積みを課すことができる仕組みを導入する。

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一方、先の金融危機では多くの銀行で資金の流動性が枯渇した反省を踏まえ、厳しいストレス下でも流動性を維持できるレベルの流動資産の保有を義務付ける。具体的には13年から国レベルで流動性要件を導入し、15年以降はEU共通の最低基準を設定する。このほか自己資本に対する他人資本(有利子負債等)の割合を示すレバレッジ比率に関しては、欧州委が16年末までにまとめる報告書に基づき、加盟国と欧州議会が必要と判断した場合は18年1月からEU共通の基準を設定して規制の対象とする。

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英国では銀行部門に関する独立委員会が昨年、国内銀行の財務強化を図るための具体策として、リテール部門を投資銀行部門から分離して同一金融グループ内の子会社とすることや、自己資本比率10%を課すことなどを柱とする銀行改革案を発表。政府も同案を支持し、19年までの完全実施を目指している。今回の合意により、英国は欧州委の承認を待たずに10%の自己資本比率を導入することが可能になる。オズボーン財務相は「政治的合意が成立したことに満足している。今後は技術的な変更について話し合う必要がある」と語った。

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