2012/6/18

産業・貿易

食品への未承認GMOの偶発的混入、飼料原料と同じ許容水準設定か

この記事の要約

欧州委員会はEUで承認されていない遺伝子組み換え作物(GMO)の偶発的な混入率が0.1%以下の食品について、域内への輸入を認める法案を近くまとめるもようだ。欧米メディアが複数のEU当局者の話として報じた。EUでは2007 […]

欧州委員会はEUで承認されていない遺伝子組み換え作物(GMO)の偶発的な混入率が0.1%以下の食品について、域内への輸入を認める法案を近くまとめるもようだ。欧米メディアが複数のEU当局者の話として報じた。EUでは2007年以降、未承認GMOの混入を一切認めない「ゼロ・トレランス(ゼロ許容)」政策がとられてきたが、域外から輸入される飼料用原料に関しては昨年、未承認GMOの許容水準を0.1%とするルールが導入されている。ただ、ドイツなどは食品に関してゼロ許容政策を放棄すべきでないとの立場を表明しており、欧州委の提案が加盟国から十分な支持を得られるかどうかは不透明だ。

\

EUはGM食品および飼料の表示とトレーサビリティに関する2003年の規則に基づき、未承認のGMOの混入が確認された場合、たとえ微量であっても域内への輸入を全面的に禁止してきた。移行措置として、同規則の施行から3年間は0.5%以内の偶発的な混入を許容する移行措置が取られたが、同措置が失効した後の09年に米国から輸入された飼料用ダイズに未承認のGMトウモロコシが微量混入していたことが発覚。同国産ダイズの輸入が全面禁止となり、飼料用原料が不足する事態に陥った。このため欧州委は未承認GMOの偶発的な混入は避けられないとの立場を明確に打ち出し、昨年には飼料用原料について混入率の許容水準が0.1%に設定された。

\

ロイター通信によると、欧州委保健・消費者保護総局のビンセント報道官は11日、「欧州委員会として年末までに輸入食品への未承認GMOの混入に関する問題に取り組みたいと考えており、近く法案をまとめる」と発言。また、別のEU当局者は匿名を条件に、年内に加盟国と欧州議会の承認が得られるよう、夏休みに入る前に欧州委から法案が提出されるとの見通しを示した。

\

飼料用原料と同様、輸入食品に係る未承認GMO混入の許容水準は、(1)輸出国で栽培が認可されており、かつ(2)欧州食品安全機関(EFSA)による最終的な承認には至っていないものの、一連の科学的検査で安全性が確認されたGMO――に限って適用される見通し。ただ、EU市民の間ではGMOに対する抵抗が根強く、食品に飼料用原料と同じ許容水準を設定する構想に対して加盟国から批判の声が上がるのは確実。ドイツのアイグナー農相は11日、輸入食品に係る未承認GMOの混入について、ゼロ許容政策の放棄につながるいかなる提案にも断固反対する方針を表明している。

\