欧州議会の・経済金融委員会は19日、EU域内で活動する格付け会社に対する規制強化法案の修正案を承認した。大手格付け会社による寡占状態を改善するため導入が検討されている「輪番制」について、同じ格付け会社を継続して起用できる期間を原案の3年から5年に延長し、規制対象も一部の金融商品に限定するなど、全体として業界寄りの立場を取る加盟国の主張に沿った内容になっている。欧州議会と加盟国の間で最終案をまとめるための協議に入り、遅くとも2013年末までの新規制導入を目指す。
\EUはすでに登録制を導入するなど、域内で活動する格付け会社に対する監視を行っているが、不透明な判断基準に基づく国債の格下げなどが欧州の債務危機を悪化させたとの批判を受け、欧州委が昨年11月に輪番制の導入や投資家の権利強化などを柱とする規制案を発表。加盟国と欧州議会で検討が進められている。
\欧州委はスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスの大手3社による寡占状態を改善して競争を促進するため、企業が3年以上にわたり同じ格付け会社を起用できないようにすることを提案していたが、銀行などは世界規模で事業展開している数少ない格付け会社の変更を義務づけられた場合、信頼性の低い中小の格付け会社を起用せざるを得なくなるなどと主張。加盟国と欧州議会に規制案の見直しを迫っていた。
\経済金融委で承認された修正案によると、同じ格付け会社を継続して起用できる期間は5年に設定され、規制対象も資産担保証券(ABS)などの証券化商品とその他のストラクチャード・ファイナンス商品に限定される。一方、ソブリン債に対する規制に関しては、現在のところ年1回の格付け見直しを年間2-3回実施し、予め各国政府に公表日を通知するよう求めている。スケジュール以外に格付けの変更を行う場合は欧州証券市場監督機構(ESMA)の承認を得なければならず、「例外的かつ予想不能な状況」が承認の条件となっている。
\このほか外部機関が行う格付けへの過度の依存を抑制するため、欧州議会では欧州独自の格付け機関を設立する案も検討されたが、最終的に修正案には盛り込まれず、代わりに既存のEU機関が独自に加盟国の信用力を評価するシステムの導入を提案している。さらに投資家を保護するための措置として、格付け会社の誤った判断によって損害が生じた場合、居住国の法律に基づいて損害賠償を請求できる制度が導入される。一方、顧客企業が格付けに干渉するなどの利益相反を防ぐため、格付け会社がある企業に2%以上出資している場合、当該企業に関連した格付けを行うことはできない。
\修正案の策定を主導したレオナルド・ドメニチ欧州議員は「格付け会社の判断が加盟国の政策に影響を及ぼすケースもあり、深刻化するユーロ圏債務危機は格付け会社の影響力が大きくなりすぎた結果だ」と指摘している。
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