2012/8/20

産業・貿易

サバ漁でアイルランドとアイスランドの対立激化、「タラ戦争」再来の懸念も

この記事の要約

金融危機でともに深刻な打撃を受けたアイルランドとアイスランドが、北海サバ漁をめぐり激しく対立している。アイスランドは1950-70年代にかけて主に英国との間で北海タラをめぐる紛争を経験しており、漁業関係者らは「タラ戦争」 […]

金融危機でともに深刻な打撃を受けたアイルランドとアイスランドが、北海サバ漁をめぐり激しく対立している。アイスランドは1950-70年代にかけて主に英国との間で北海タラをめぐる紛争を経験しており、漁業関係者らは「タラ戦争」の再現ともいえる「サバ戦争」に発展しかねない事態に神経を尖らせている。

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大西洋北東海域のサバ漁をめぐっては、EUとノルウェーが漁獲枠を定めてきたが、地球温暖化の影響で回遊ルートが変化した結果、アイスランド水域内でサバの生息数が増え、水揚げが急増した。同国は2010年、サバの漁獲枠を一方的に従来の6.5倍にあたる13万トンに拡大。デンマーク領フェロー諸島も同3.4倍の8万5,000トンに設定したことで、国際海洋探査委員会(ICES)が推奨する漁獲枠を全体で35%上回る見通しとなり、周辺国で資源枯渇への懸念が一気に高まった。

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EUは昨年1月以来、アイスランドの漁船からEU内の港へのサバの水揚げを禁止するなど対抗措置を講じているが、金融危機の直撃を受けたアイスランドにとって漁業は貴重な外貨獲得手段であり、EUに歩み寄る姿勢を見せていない。このためアイルランドは先月、フランス、ポルトガル、スペインとともに、アイスランドとフェロー諸島に制裁措置を科すよう欧州委に要求。欧州議会は9月にアイスランドからの水産物の禁輸措置について採決を予定している。

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アイルランドのコベニー農水・食料相は英フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、「アイスランドとフェロー諸島は資源枯渇を引き起こすレベルの乱獲を続けている。サバの豊漁を外貨獲得のチャンスと捉え、一方的に漁獲枠を宣言するなど、すべての国際的な取り決めを無視している」と発言。持続可能な漁業を脅かすアイスランドなどの対応を強く批判している。

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