2012/9/10

総合 –EUウオッチャー

ECBが無制限の国債購入表明、スペイン・伊の支援念頭に

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は6日に開いた定例政策理事会で、ユーロ圏の重債務国の国債を無制限で買い入れることを決定した。スペイン、イタリア国債の購入を念頭に置いたもので、ECBが買い支えることで高止まりしている利回りを引き下げ […]

欧州中央銀行(ECB)は6日に開いた定例政策理事会で、ユーロ圏の重債務国の国債を無制限で買い入れることを決定した。スペイン、イタリア国債の購入を念頭に置いたもので、ECBが買い支えることで高止まりしている利回りを引き下げ、両国が妥当なコストで資金を調達できるようにするのが狙い。ただ、国債買い取りには条件が付いており、実施には時間がかかる見通しだ。

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ECBの購入対象となるのは、償還期間が1~3年以内の国債。流通市場で上限を設けず、利回りが適正水準に下がるまで買い入れる。ただし、対象国はまず、財政危機に直面するユーロ参加国に対するEUの緊急金融支援の枠組みである「欧州金融安定基金(EFSF)」またはその後継基金である「欧州安定メカニズム(ESM)」に支援を要請し、同基金が国債購入を開始することが条件となる。さらに対象国は、ギリシャなどがEFSFに金融支援を要請した際と同様の財政再建計画をまとめ、それを実行することが求められる。

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ECBは2010年5月から、ギリシャの財政危機で動揺した金融市場を支えるため、財政悪化国の国債を流通市場で買い取るという異例の措置を実施。これまでに2,100億ユーロ相当の国債を購入したが、3月から中止している。信用不安に直面するスペイン、イタリアの国債の利回りが高水準で推移し、両国の資金調達が困難となる中、国債購入の再開を求める声が強まっていた。

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新たに打ち出した措置では、購入額は無制限となるものの、財政再建の約束という高いハードルが設けられる。このため、イタリアとスペインの首相は、ECBの決定を歓迎しながらも、国債購入を要請するかどうか明言を避けた。

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また、ECBがEFSF、ESMによる国債購入を条件としたことで、当面は同措置の実施が見送られる。EUは6月末の首脳会議で、EFSFとESMが重債務国の国債を購入できるようにすることで合意したが、ユーロ圏17カ国の銀行監督を一元化することが前提となっているためだ。

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それでも、ECBが無制限の国債買い支えを表明したことで信用不安拡大を恐れる市場の不安を鎮める効果はあり、同日にイタリア、スペイン国債の利回りは低下した。

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一方、同日の定例政策理事会では、ユーロ圏17カ国に適用される最重要政策金利を現行の年0.75%に据え置くことを決めた。ECBは7月、信用不安による動揺が続くユーロ圏経済を下支えするため、昨年12月以来7カ月ぶりの利下げを実施したばかりで、今回の決定は予想通り。

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また、同日発表した内部経済予測では、今年のユーロ圏の域内総生産(GDP)伸び率をマイナス0.4%とし、6月の同0.1%から0.3ポイント下方修正した。2013年の予想伸び率もプラス1%から同0.5%に引き下げた。

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