2012/10/8

環境・通信・その他

原発ストレステストの最終報告公表、安全性向上に250億ユーロ必要

この記事の要約

欧州委員会は4日、東京電力福島第1原発の事故を受けて進めていた域内の原子力発電所を対象としたストレステスト(耐性評価)の最終報告を公表した。稼働を停止しなければならないほどの重大な欠陥は見つからなかったものの、福島の事故 […]

欧州委員会は4日、東京電力福島第1原発の事故を受けて進めていた域内の原子力発電所を対象としたストレステスト(耐性評価)の最終報告を公表した。稼働を停止しなければならないほどの重大な欠陥は見つからなかったものの、福島の事故に匹敵するような厳しい条件下で安全性を確保するには「ほぼすべての原発で改善が必要」と指摘。安全性向上には最大で250億ユーロが必要との試算を示し、各国に改善に向けた行動計画の策定を求めた。

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EUは昨年6月以来、域内14カ国とスイス、ウクライナで稼働中の原発145基を対象に地震、津波、洪水、豪雨などの自然災害や航空機の墜落などを想定したストレステストを実施してきた。当初は最初に各原発の運営会社が点検を行い、次に各国当局が審査を実施、最後に他の加盟国の専門家がチェックするという3段階のテストを4月末までに完了し、6月中に最終報告をまとめる予定だったが、「ピアレビュー」と呼ばれる最終段階のテストが進まず、計画がずれ込んでいた。

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報告書によると、大規模地震と洪水への対応が不十分な原発は、検査対象となった145基のうちそれぞれ54基、62基となっている。一方、地震計が設置されていなかったり、旧式の計測機が設置された原発が121基に上った。さらに、事故時に格納容器の圧力を下げるため、汚染された蒸気を外部に放出するためのフィルター付きベントが設置されていない原発は32基だった。

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欧州委はこれらの改善課題に対応するための費用を100億-250億ユーロと試算。加盟国に実施期日を含む行動計画を年内に提出するよう義務づけ、来春にピアレビューを実施、2014年6月をめどに改善策の進捗状況に関する報告書をまとめる意向を示している。欧州委は一方、技術面の対策に加えて法的枠組みの見直しも進めており、13年初めをめどに原発安全性に関するEU指令の改正案をまとめる方針を明らかにした。

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