2012/10/15

総合 –EUウオッチャー

EUがノーベル平和賞受賞、平和と安定への貢献を評価

この記事の要約

ノルウェーのノーベル賞委員会は12日、2012年のノーベル平和賞をEUに授与すると発表した。EUの前身である欧州共同体(EC)などの時代を含め、「60年以上にわたり、欧州の平和と和解、民主主義と人権の向上に貢献してきた」 […]

ノルウェーのノーベル賞委員会は12日、2012年のノーベル平和賞をEUに授与すると発表した。EUの前身である欧州共同体(EC)などの時代を含め、「60年以上にわたり、欧州の平和と和解、民主主義と人権の向上に貢献してきた」というのが授賞理由。半世紀以上にわたる地域統合の取り組みが評価された形だが、債務危機で通貨統合の矛盾が表面化し、ギリシャのユーロ離脱やEUの空中分解がささやかれる中での受賞だけに、各国からは平和賞の受賞を疑問視する声も上がっている。

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ノーベル賞委員会は声明で◇第2次世界大戦まで敵対関係が続いていたフランスとドイツの和解を実現した◇1970年代まで軍事独裁体制が続いていたポルトガル、スペイン、ギリシャ、さらに東西ドイツの統一を経て中・東欧諸国をEUに受け入れ、旧共産圏を含む欧州全域に民主主義を根付かせた◇90年代のユーゴ内戦を終結に導き、バルカン半島に政治的安定をもたらした――などを受賞理由に挙げた。同委のヤーグラン委員長はEUが経済・社会面でさまざまな問題に直面していることを認めたうえで、「今回の授賞はEUが構築してきた欧州の平和と調和を守り、過激主義やナショナリズムの台頭によって欧州大陸を再び分断の方向に向かわせないためのメッセージだ」と強調。債務危機に揺れるEU諸国が結束して問題解決にあたる必要があるとの考えを示した。

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ファンロンパイEU大統領は訪問先のフィンランドで会見し、「欧州は戦争と分断を克服して平和と安定を構築してきた。EUこそ歴史上で最大の和平調停機関だ」と述べた。欧州委員会のバローゾ委員長も「5億人の全EU市民にとって大きな栄誉だ」と受賞を歓迎。「EUは世界に規範を示すモデルになりたい」と述べ、直面する経済危機を乗り越えて平和や人権の尊重といった理念を追及していく決意を表明した。

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一方、財政支援の条件としてEUから厳しい緊縮策の実行を強いられているギリシャやスペインでは平和賞の受賞に懐疑的な意見が目立つ。ギリシャの急進左派連合の幹部は「長引く信用不安で南欧諸国では貧困層が拡大し、社会的結束が崩壊しつつある。こうした中での平和賞受賞は奇妙だ」と発言。スペインの野党・社会労働党幹部も「EUには問題に対処する強い政治的意思が欠如している」と批判。「平和賞の受賞をきっかけにEUが原点に戻り、現状が打破されることを期待する」と述べた。

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