2012/10/29

総合 –EUウオッチャー

欧州議会、ルクセンブルク中銀総裁のECB理事指名に反対

この記事の要約

欧州議会は25日の本会議で、欧州中央銀行(ECB)の新専務理事にルクセンブルク中央銀行のメルシュ総裁を充てる人事案を否決した。ECB幹部に女性が1人もいないのにもかかわらず、女性の起用に向けた十分な努力が尽くされていない […]

欧州議会は25日の本会議で、欧州中央銀行(ECB)の新専務理事にルクセンブルク中央銀行のメルシュ総裁を充てる人事案を否決した。ECB幹部に女性が1人もいないのにもかかわらず、女性の起用に向けた十分な努力が尽くされていないことが理由としている。

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ECBの最高意思決定機関である理事会は総裁・副総裁を含むECB幹部6人とユーロ圏17カ国の中銀総裁で構成されるが、メンバーは全員が男性。メルシュ氏はゴンサレスパラモ前専務理事の後任として5月に指名されたが、債務危機対応で主導権を握りたいユーロ圏各国の駆け引きで承認が遅れており、同ポストは空席のままとなっている。メルシュ氏が専務理事に就任すれば、2018年まで欠員は出ない。欧州議会の経済・金融問題委員会のボウルズ委員長は、「ECB理事で将来的に女性を起用するための行程すら約束しなかった」とファンロンパイEU大統領の消極的な姿勢を強く批判。「EUの各機関は足を引っ張るのではなく、前例を示すべきだ」と女性登用に向け努力するよう求めた。

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欧州議会の決議に法的拘束力はなく、専務理事の人事は最終的にユーロ圏政府が決定するため、メルシュ氏の専務理事就任は動かないとの見方が有力だ。ただ、今回の欧州議会の否決は、ECB理事会における女性の不在に異議を唱える政治的メッセージの性格を持ち、EUで政財界における女性登用問題が大きくクローズアップされる中で一定の影響力を与えると見られる。

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一方、企業における男女格差の是正を目指す欧州委員会は23日、EU域内の上場企業に対して女性役員の登用を義務づける割当制(クオータ制)の導入を柱とする法案の採決を1カ月延期すると発表した。EU法に違反する可能性が指摘されたことが理由。法案は、20年までに取締役会に占める女性の割合を40%に引き上げることを義務づけるほか、規定に従わない企業には違反金の支払いを命じたり、政府の入札への参加禁止や公的補助金の対象外とするなどの制裁措置を科すという内容。ただ、クオータ制の導入は必ずしも女性の権利拡大にはつながらないとの声も多く、英国やオランダなど9カ国が反対を表明している。欧州委は11月中旬までに法案を再提出することになっているが、女性取締役の比率を40%とすることを法的に義務付けるのではなく努力目標に格下げするなど、内容の大幅修正は避けられない見通しだ。

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