2012/11/19

総合 –EUウオッチャー

13年EU予算めぐる協議、欧州議会がボイコット

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会は、2013年EU予算の編成について13日に再協議する予定だったが、欧州議会側のボイコットにより実施されなかった。これにより年内の予算案成立は困難な状況となり、越年の公算が大きくなってきた。さらにEU […]

EU加盟国と欧州議会は、2013年EU予算の編成について13日に再協議する予定だったが、欧州議会側のボイコットにより実施されなかった。これにより年内の予算案成立は困難な状況となり、越年の公算が大きくなってきた。さらにEUでは、次期中期予算に関する加盟国の対立も続いており、予算編成をめぐる情勢は複雑な利害関係が絡んで混迷を深めている。

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欧州議会は13年EU予算について、欧州委員会がまとめた原案に沿って、歳出(支払いベース)を前年比6.8%増の総額1,379億ユーロとすることを求めている。これに対して英国、ドイツなど主要国は、大幅な削減を要求。12年の補正予算をめぐる対立も加わって、調整が難航している。

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9日に実施された協議では、12年予算で89億ユーロの追加支出を求める欧州議会と、これに反対する加盟国側の溝が埋まらず、13年予算に関する話し合いが行われないまま決裂した。これを受けて13日に再協議が予定されていた。しかし欧州議会側が、12年補正予算で加盟国側に歩み寄りが見られないとして、交渉の席に着くことを拒否した。

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予定されている双方の協議の場は今回が最後だったことから、何らかの突破口が開けない限り、予算成立は来年に持ち越しとなる。この場合、欧州委は新たな予算案の提出を迫られ、13年予算は暫定的に、前年の予算を土台に月ベースで執行される。

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一方、EUでは次期中期予算(対象期間:2014~20年)をめぐる調整も難航している。11月22、23日に開催されるEU特別首脳会議での協議を前に、13日には大幅な減額を求める英国のキャメロン首相が同様の立場にあるイタリア、オランダを訪問し、両国首脳に支持を要請した。これに対して、ポーランドなどEUの補助金の受益国となっている15カ国は同日、ブリュッセルのEU本部で首脳会議を開き、経済発展が遅れている地域のインフラ整備などを支援する構造改革基金の増額を目指して、中期予算協議で結束することを確認。両陣営の対立が続いている。

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こうした中、EUのファンロンパイ大統領(欧州理事会常任議長)は14日、中期予算の歳出を欧州委の原案から約750億ユーロ削減する妥協案を提示した。

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欧州委が昨年6月に発表した原案の予算総額は、現行中期予算(2007~13年)を5%上回る1兆330億ユーロ。これに対して、EU予算への拠出が多い英国、ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデンなどは、各国が財政再建のため予算を減らしている状況下で、EU予算の増額は受け入れられないとして原案から1,000~2,000億ユーロ削減するよう求めている。

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ファンロンパイ大統領の妥協案は、原案から農業補助金を255億ユーロ、構造改革基金への支出を295億ユーロ削減することなどを盛り込んだ内容。削減幅は英国などが求める規模を下回る。しかし、増額反対派の急先鋒である英国の懐柔策として、予算分担金の一部を英国に限って払い戻す「リベート制」の維持を打ち出した。

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リベート制は1984年、当時の英サッチャー政権の要求によって導入されたシステム。英国はEU予算の拠出額が大きい割に、最大の歳出項目である農業補助金の受取額が少なく、しかも当時の英国は国民所得(1人あたり)がEU平均を下回っていたことから特別に認められたものだ。

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同制度をめぐっては、導入当時と比べて英国の国力が増し、EU予算に占める農業補助金の割合が低下していることから、フランスなどから不公平として廃止を求める声が上がっている。

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ファンロンパイ大統領は、同制度を維持することで英国の歩み寄りに期待をかけている。しかし、払い戻しの負担について、英国を含むEU27カ国で分担する方針を打ち出し、英国が受け取る金額が減ることから反応は冷ややかで、同国政府は妥協案を受け入れず、歳出のさらなる削減を求める姿勢だ。また、フランスも、同国が大きな恩恵を受けている農業補助金の削減に反発しており、妥協案が問題打開の糸口となるのは難しい情勢だ。

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