2012/11/26

総合 –EUウオッチャー

中期予算めぐる協議決裂、来年に再協議へ=EU首脳会議

この記事の要約

EU27カ国は22、23日に開いた特別首脳会議で、EUの次期中期予算(対象期間:2014~20年)について討議したが、英、独など減額を求める国々と増額派との溝が埋まらず、合意に至らなかった。調整役のファンロンパイEU大統 […]

EU27カ国は22、23日に開いた特別首脳会議で、EUの次期中期予算(対象期間:2014~20年)について討議したが、英、独など減額を求める国々と増額派との溝が埋まらず、合意に至らなかった。調整役のファンロンパイEU大統領(欧州理事会常任議長)は、双方の主張の隔たりが大きいことから早期の妥結を断念し、さらに調整を進めた上で来年に再協議することを決めた。

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欧州委が昨年6月に発表した原案の予算総額は、現行中期予算(2007~13年)を5%上回る1兆330億ユーロ。これに対して、EU予算への拠出が多いドイツ、英国、オランダ、スウェーデンなどは、債務危機に直面する欧州で各国が予算を減らしているのに、EU予算が増額されるのは受け入れられないとして大幅な減額を要求している。一方、EUの農業やインフラ投資への補助金に大きく依存する中東欧諸国は、補助金が削減されるのを恐れて欧州委案を支持。また、増額反対派の中でも、フランスが農業補助金を減らさない形での減額を求めるなど、各国の利害が複雑に絡み合っている。

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中期予算成立には、全加盟国による承認が必要。EU議長国のキプロスは10月末、予算協議の妥結に向けて、欧州委の原案から500億ユーロを減額する妥協案を提示したが、増額派が猛反発したばかりか、増額反対派も削減幅が小さすぎるとしてはねつけ、調整が難航していた。

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特に大きな焦点となっているのが、増額反対派の急先鋒である英国の動き。キャメロン首相は、予算の増額を支持する国が多数を占めることから、大幅な減額を勝ち取るのは不可能として、妥協策として物価上昇率と同水準の範囲内での増額を認める方針だった。しかし、英下院が今月初め、物価上昇を加味した実質ベースでの減額を取り付けない限り、拒否権を発動することをキャメロン首相に求める決議を採択したことから、強硬な姿勢を維持せざるを得ない状況に追い込まれている。

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ファンロンパイ大統領は今回の首脳会議で、農業補助金、経済発展が遅れている地域のインフラ整備などを支援する構造改革基金への支出などを原案から小幅ながら減らすことで、予算総額を前期(2007~13年)より210億ユーロ少ない9,720億ユーロまで削減することを提案した。しかし、英国、オランダ、スウェーデンなどは、なお削減が必要と主張。増額派の中東欧諸国や、農業補助金の削減に抵抗するフランスも受け入れを拒否し、協議は平行線をたどった。

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両派の主張には約3,000億ユーロもの隔たりがあることから、ファンロンパイ大統領は現状のまま協議を継続しても妥結は不可能と判断し、来年初めに再協議する方針を決定。2月の協議再開が有力視されている。それまでに同大統領は欧州委のバローゾ委員長と共同で新たな妥協案をまとめることになる。

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