2012/12/27

環境・通信・その他

重工業部門の無償排出枠拡大、鉄鋼業など候補に

この記事の要約

欧州委員会はEU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間で実施するエネルギー集約型産業を対象としたベンチマーク方式による排出枠の無償割当に関連して、規制の緩い第3国に生産拠点を移す「カーボンリーケージ」のリスクが特に高い […]

欧州委員会はEU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間で実施するエネルギー集約型産業を対象としたベンチマーク方式による排出枠の無償割当に関連して、規制の緩い第3国に生産拠点を移す「カーボンリーケージ」のリスクが特に高い鉄鋼業などの産業部門への割当量を拡大する方向で検討を進めているもようだ。ロイター通信がEU関係者の話として報じた。第3期間の初年度に当たる2013年分の無償排出枠は2月末までに各施設に配分されることになっており、欧州委は割当量を拡大する対象セクターの選定作業に入るという。

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EU-ETSの第1期間では全体の95%、第2期間でも90%の排出枠が対象施設に無償で割り当てられてきたが、第3期間以降は段階的にオークションによる有償割当への移行を進め、27年までに全面移行することが決まっている。ただし、EU指令は制度変更に伴う新たなコスト負担を回避する目的で、カーボンリーケージのリスクが高い鉄鋼、アルミ、セメント、繊維などの産業部門を対象に、ベンチマーク方式による排出枠の無償割当を行う移行的支援措置を定めている。ベンチマークは同一製品を製造する施設のうち、07-08年時点で最も効率的な上位10%の施設における排出実績の平均値を基に設定される。

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欧州市場では主に景気後退の影響で排出枠の余剰が生じ、供給過剰による排出権価格の下落傾向が続いているが、欧州委は排出権価格を下支えするため、排出枠オークションの一部延期や、排出上限枠を経済成長率に連動させて調整するなどの手法についても検討を進めている。このため今後は排出権価格が上昇に転じるとみられており、重工業分野の業界団体などから実際の排出量が上限を超えた場合に超過分の排出権を購入する際の負担増を懸念する声が上がっている。

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欧州委のある高官はロイター通信に対して、「欧州委はEU-ETSの影響が大きく、生産拠点を移転する可能性が最も高いセクターのリスト作りを計画している」と発言。別の高官は、鉄鋼業界に追加の無償排出枠が割り当てられる可能性が最も高いと語っている。

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