2013/1/7

総合 –EUウオッチャー

富裕層への大幅増税は違憲、仏憲法評議会が判断

この記事の要約

フランスの憲法評議会は12月29日、オランド大統領が打ち出している富裕層に対する大幅な増税は違憲との判断を下した。オランド政権は富裕層と大企業への増税を財政赤字削減策の目玉としていただけに、今回の憲法評議会の判断は打撃と […]

フランスの憲法評議会は12月29日、オランド大統領が打ち出している富裕層に対する大幅な増税は違憲との判断を下した。オランド政権は富裕層と大企業への増税を財政赤字削減策の目玉としていただけに、今回の憲法評議会の判断は打撃となる。

\

富裕層への増税は、年収のうち100万ユーロを超える所得に対して75%という高税率を課すもので、13年から2年間の時限措置として導入される予定だった。政府はこの課税を盛り込んだ13年度予算案を編成し、12月20日に可決されたが、野党側は不公平な税制だとして憲法裁判所にあたる憲法評議会に審理を求めていた。

\

憲法評議会は、75%の課税が世帯ではなく個人の所得を対象としており、税負担の平等原則に反すると指摘。具体的には夫婦それぞれの所得が100万ユーロをわずかでも下回っていればその世帯は課税対象外となるのに対し、夫婦いずれか一方の所得が100万ユーロを超える世帯では課税されることになり、合計所得が高い世帯の税負担が軽くなる可能性があることを問題点として挙げた。

\

エロー首相は憲法評議会の判断を受け声明を発表し、「今回の判断は財政赤字目標とそこに至る道筋を疑問視しているわけではない」と述べる一方で、「憲法評議会によって示された原則に沿った新たな制度を提案する」として、別の課税方法を導入する考えを示した。富裕層への課税強化をめぐっては、財政再建への貢献度を高めるという目的に理解を示す声がある一方で、高額所得者の国外流出を招くとの批判も出ている。9月にはフランス1位の富豪であるモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノー会長がベルギー国籍を申請したことが発覚。有名俳優のジェラール・ドパルデュー氏も国外への移住を宣言するなど、節税目的と見られる富裕層の国外脱出の動きが議論を呼んでいる。

\