2013/1/7

競争法

トムソン・ロイターへの調査打ち切り、市況データ配信めぐり

この記事の要約

欧州委員会はこのほど、米金融情報大手トムソン・ロイターの市況データ配信サービスをめぐる競争法上の調査を打ち切ると発表した。同社が提示した新たな改善策について市場テストを実施した結果、一連の措置を通じて顧客は自由に市況デー […]

欧州委員会はこのほど、米金融情報大手トムソン・ロイターの市況データ配信サービスをめぐる競争法上の調査を打ち切ると発表した。同社が提示した新たな改善策について市場テストを実施した結果、一連の措置を通じて顧客は自由に市況データのプロバイダーを変更することが可能になり、公正な競争が促進されると判断した。

\

欧州委の調査で焦点となっていたのは、顧客が株価などの情報検索に使用する「Reuters Instrument Code(RIC)」と呼ばれるロイター固有の銘柄識別コード。同社は顧客が競合他社の提供するデータを読み取り、ロイターのデータと対応させる「マッピング」のためにRICを使用することに禁止していた。欧州委はロイターが市場支配的地位を濫用してRICの二次利用を不当に制限し、顧客が他社のサービスを利用しにくい状況をつくっているとの疑いを強め、2009年10月に同社に対する本格調査を開始。ロイターはこれを受け、2011年12月にライセンス料を支払った顧客にRICの二次利用を認めることや、競合他社のデータに対応させるために必要な情報を提供するなどの改善策を提示し、さらに今年7月にはライセンス料の引き下げを柱とする追加的措置を提案していた。

\

欧州委によると、「ERL」と呼ばれる新たなライセンス形態が導入されることで、ロイターの顧客はRICを使って同業他社が提供するリアルタイムの市況データに自由にアクセスできるようになるほか、RICと他社サービスの相互運用に必要なツールを第3者が開発できるようになり、市況データのプロバイダー間で競争が促進される。なお、一連の改善策が確実に実行されるよう、欧州委が任命する受託者(trustee)が遵守状況の監視を行う。確約に反した場合、ロイターは年間売上高の最大10%に相当する制裁金を科される可能性がある。

\