2013/2/18

産業・貿易

EUと米がFTA交渉開始で合意、6月末までの交渉入り目指す

この記事の要約

EUと米国は13日、自由貿易協定(FTA)を含む包括的な貿易・投資協定の締結に向けた交渉を開始することで合意したと発表した。EU・米間のFTAが実現すれば世界全体の国内総生産(GDP)の約半分、貿易総額の約3割を占める巨 […]

EUと米国は13日、自由貿易協定(FTA)を含む包括的な貿易・投資協定の締結に向けた交渉を開始することで合意したと発表した。EU・米間のFTAが実現すれば世界全体の国内総生産(GDP)の約半分、貿易総額の約3割を占める巨大貿易圏が創設され、国際的な貿易体制に大きな影響を及ぼすことになる。EU側は2年以内の妥結を目指す意向を示しているが、農業分野などで交渉が難航する可能性もあり、実現までには曲折も予想される。

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オバマ米大統領とEUのファンロンパイ大統領は共同声明で「世界最大の米欧間の経済関係を一層強化する」と強調した。一方、欧州委員会のバローゾ委員長は会見で、二大経済圏による協定が世界の通商・貿易システムに「変革をもたらす」と指摘。「納税者に負担を強いることなく経済を活性化できる」と述べ、6月末までに交渉を開始したいとの考えを示した。また、欧州委のデフフト委員(通商担当)は規制や認可手続きなどの統一や、非関税障壁の撤廃が交渉の中心的テーマになると指摘し、2年以内に交渉を完了させたいとの考えを示した。

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欧州委の試算によると、EU・米間の包括的な貿易協定は2027年までにEUと米国のGDPをそれぞれ0.5%、0.4%押し上げ、EUでは年間860億ユーロ、米国では650億ユーロの経済効果が生まれるとみられている。また、世界貿易機関(WTO)によると、輸入品に対するEUと米国の平均関税率はそれぞれ5.2%、3.5%といずれも低水準だが、米商工会議所によれば、双方がすべての関税を撤廃した場合、5年間でEUと米国のGDPは計1,800億ドル増加する可能性があるという。

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WTOの多角的貿易交渉「ドーハ・ラウンド」が暗礁に乗り上げるなか、EUと米国はそれぞれ有力な貿易相手国との二国間交渉に力を入れている。これまでの事前協議では、牛肉をはじめとする農産物に関してEUの安全基準が米国より厳しく、農業分野の規制緩和をめぐって対立が表面化したが、自由貿易の促進を通じて経済を活性化させるとともに、中国やインドなど新興国の台頭による経済のグローバル化に対応したいとの思惑で一致した。

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EU加盟国は今月8日の首脳会議で、通商政策の最優先課題として対米FTAを推進することで合意し、早期の交渉入りを目指す方針を表明した。これに続いてデフフト欧州委員とカーク米通商代表部(USTR)代表を座長とする「雇用と成長に関するハイレベル作業部会」は11日、早期のFTA交渉開始を提言する最終報告をまとめ、これを受けてオバマ大統領も12日の一般教書演説でEUとの交渉開始を表明。大統領は「大西洋をまたいだ自由貿易は、米国に高賃金の雇用をもたらす」と強調した。

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交渉開始に向けた今後の手続きとして、欧州委は3月後半をめどに加盟国の正式な承認を得るための交渉指令案をまとめる。一方、米政府は議会への通知手続きに入る。

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