2013/2/25

産業・貿易

アルセロール、欧州再編計画見送り

この記事の要約

欧州委員会は19日、業績悪化に直面する鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルが欧州における事業再編計画の実施を6月まで見送り、域内の2工場に総額3億2,000万ユーロを投資する方針を固めたと発表した。同社は欧州での鉄鋼需要 […]

欧州委員会は19日、業績悪化に直面する鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルが欧州における事業再編計画の実施を6月まで見送り、域内の2工場に総額3億2,000万ユーロを投資する方針を固めたと発表した。同社は欧州での鉄鋼需要の落ち込みを受けて工場閉鎖を含むリストラ策を打ち出していたが、EUや関係国の政府が雇用確保のため計画の見直しを求めていた。

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アルセロール・ミタルは欧州委のタヤーニ副委員長(産業・企業担当)に書簡を送り、再編計画の一時凍結と2工場への新規投資を伝えた。投資の対象はフランス北部フロランジュとベルギー南東部リエージュの工場。同社は欧州市場で鉄鋼需要の回復が見込めないとして、これら2工場の一部閉鎖や人員削減を打ち出していたが、ベルギーではリストラに反対する労働組合などが激しい抗議行動を展開。仏政府もフロランジュ工場を一時国有化する計画を打ち出して同社にリストラ策の再考を迫り、650人の削減計画を撤回させていた。

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欧州委によると、アルセロール・ミタルはフロランジュ工場1億8,000万ユーロ、リエージュ工場に1億4,000万ユーロを投じ、自動車向けを中心に最先端の技術を活用して高品質な鉄鋼製品を生産する。一方、欧州委は6月をめどに欧州鉄鋼業界を活性化させるための戦略をまとめることになっており、同社はそれまでの間、新たなリストラを実施しないことも確約している。

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EU域内には約500の鉄鋼関連施設があり、およそ36万人が従事している。しかし、長引く景気の低迷で欧州市場では過去5年間に鉄鋼需要が約30%落ち込み、世界の粗鋼生産量に占めるEUのシェアは2001年の21%から11年には12%に縮小した。アルセロール・ミタルは2012年通期決算で37億2,000万ユーロの純損失を計上。これまでにルクセンブルクで工場の一時閉鎖や生産規模の縮小に踏み切っている。

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