2013/3/4

産業・貿易

銀行報酬規制で基本合意、「バーゼルIII」14年導入に道筋

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会、欧州委員会の代表は2月28日、国際的な銀行資本規制「バーゼルIII」の実施ルールについて協議を行い、銀行員に対する新たな報酬規制の導入で基本合意した。世界有数の金融センターを抱える英国は人材流出の懸 […]

EU加盟国と欧州議会、欧州委員会の代表は2月28日、国際的な銀行資本規制「バーゼルIII」の実施ルールについて協議を行い、銀行員に対する新たな報酬規制の導入で基本合意した。世界有数の金融センターを抱える英国は人材流出の懸念などを理由に規制強化に反対しているが、他の加盟国と欧州議会はトレーダーなどのリスク行動を抑制するため銀行員の賞与(ボーナス)に上限を設ける必要があるとの認識で一致しており、閣僚理事会と欧州議会本会議で近く正式に承認される公算が大きい。最大の争点だった報酬規制で政治的合意が成立したことで、EUでは当初の予定から1年遅れの2014年1月からバーゼルIIIが段階的に導入される見通しとなった。

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報酬規制の対象はEU域内で活動するすべての銀行。たとえばEU内に本店を置く銀行の東京支店の行員や、逆に邦銀のロンドン支店の行員にも規制が適用される。3者協議での合意によると、銀行員の賞与は原則として年間の基本給と同額が上限となる。65%を超える株主の承認があれば基本給の最大2倍まで支給することが可能だが、議決が定足数(株式総数の半数を保有する株主)以下で行われる場合は75%の承認が必要となる。さらに過度のリスクテイクを助長する短期の業績に連動した高額報酬を抑制するため、基本給を超えて賞与を増額する場合、年間賞与の少なくとも4分の1について、最低5年間支払いを繰り延べることが条件となる。

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欧州議会を代表して交渉にあたったカラス議員は声明で、「これまでにない広範な規制を通じて銀行の安定性と危機回避能力が大幅に増すことになる」と強調している。これに対し、英国のキャメロン首相は「英国に拠点を置く銀行が引き続き競争力と成功を維持できるよう、EU規制に柔軟性を持たせる必要がある」と指摘。また、金融街シティーを抱えるロンドンのジョンソン市長は「EUが苦難に直面するなか、チューリッヒ、シンガポール、ニューヨークなどのライバルを後押しするようなものだ」と述べ、厳格な報酬規制が導入された場合、域内の優秀な人材がアジアや米国に流出するのは免れないと警告した。

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アナリストらの間でも過度の報酬規制は基本給の上昇を招き、かえって逆効果になるといった声が出ている。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のパートナーは「基本給が大幅に引き上げられるのは確実で、銀行は業績に応じて賞与を調整する手段を失うことになる」と指摘している。

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一方、3者協議では財務情報の開示ルールでも基本合意に達した。銀行経営の透明性を高めるため、複数の国で事業展開している大手行は14年以降、国別に収益、納税額、各国政府から受け取った補助金などの情報を開示することが義務づけられる。

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