2013/5/21

環境・通信・その他

12年の温効ガス排出量2%減、余剰排出枠は2倍超の20億トンに

この記事の要約

欧州委員会が16日公表した報告書によると、EU排出量取引制度(EU-ETS)の対象となっている約1万2,000カ所の事業所や発電所から2012年に排出された温室効果ガス排出量は、二酸化炭素(CO2)換算でおよそ18億6, […]

欧州委員会が16日公表した報告書によると、EU排出量取引制度(EU-ETS)の対象となっている約1万2,000カ所の事業所や発電所から2012年に排出された温室効果ガス排出量は、二酸化炭素(CO2)換算でおよそ18億6,700万トンとなり、前年の水準を約2%下回った。このうち12年から新たに同制度が適用された航空部門(対象は域内を結ぶ路線のみ)の排出量は約8,400万トンだった。一方、排出量取引市場ではEU-ETSの第3期間がスタートした今年1月時点で累計20億トンに上る余剰が生じており、排出枠の需給バランスが引き続き悪化している現状が浮き彫りになった。

\

EU-ETSに参加する域内27カ国とノルウェー、リヒテンシュタインの対象施設は毎年4月30日までに前年の排出実績を報告することが義務づけられており、欧州委が各国の登録簿を基に報告書を作成している。欧州委によると、今回は全体の99%を超える施設が期限内に各国当局に検証済みのデータを提出しており、航空部門(でも排出量ベースで98%をカバーする航空会社から適切に報告が行われた。

\

一方、排出権価格の低迷が続くなか、余剰排出枠は11年末時点の約9億5,000万トンから2倍以上に拡大した。欧州委は景気低迷に伴う排出量の減少に加え、京都議定書により取引が認められている京都メカニズムを活用して得た排出権を、EU-ETSの排出枠に転換する動きが活発化したことが主な要因と分析している。報告書によると、EU-ETS第2期間(08年-12年)に対象施設が得た排出枠のうち、クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトを通じた排出権(CER)からの転換は累計6億7,000万トン分(全体の6.9%に相当)、共同実施(JI)プロジェクトを通じた排出権(ERU)からの転換は3億7,800万トン分(同3.9%)に上った。対象となったCDMプロジェクトの国別内訳は中国が63%、インドが16%となっている。

\

欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は「前年に続いて温室効果ガス排出量が減少したことは歓迎すべきニュースだが、国際クレジットの活用が過去最大となったことなどにより、排出枠の需給バランスがさらに悪化したことは憂慮すべき事態だ」と指摘。排出権価格を下支えするためのテコ入れ策として欧州委が提案しているバックローディング(排出枠入札の一部延期)の必要性を改めて強調し、加盟国と欧州議会に対して速やかに同構想を承認するよう求めた。

\