2013/5/27

総合 –EUウオッチャー

エネ市場統合推進などで合意、シェールガス開発は各国判断で=首脳会議

この記事の要約

EUは22日、ブリュッセルで首脳会議を開き、安価なエネルギー供給を確保して域内企業の競争力回復を図るため、域内エネルギー市場の統合を推進すると同時に、エネルギー源の多様化を進めることで合意した。域内で開発推進派と反対また […]

EUは22日、ブリュッセルで首脳会議を開き、安価なエネルギー供給を確保して域内企業の競争力回復を図るため、域内エネルギー市場の統合を推進すると同時に、エネルギー源の多様化を進めることで合意した。域内で開発推進派と反対または慎重派に分かれている新型ガス「シェールガス」に関しては、環境面の問題に加えて採算性など不透明な点も多いことから、各国政府の判断で開発を進めることで一致した。

\

米国では「革命」と形容されるシェールガスおよびオイルの大増産によってエネルギー価格が大幅に低下し、世界のエネルギー需給構造にも影響を及ぼし始めている。欧州委員会がまとめた報告書によると、欧州では2012年時点で産業用ガス価格が米国の4倍に上り、価格差は引き続き拡大傾向にある。国際エネルギー機関(IEA)によると、米国は今後長期にわたって有力なガス輸出国となる見通しであるのに対し、EUでは2035年までに天然ガスと原油の輸入比率が80%を超えるとみられている。

\

首脳会議は総括文書で「主要経済国におけるエネルギー需要の拡大とエネルギー価格の上昇傾向が続くなか、安価なエネルギー供給を安定的に確保することがEU経済の競争力強化を図るうえで不可欠だ」と表明。早急に取り組むべき優先課題として◇域内市場の統合を推進し、15年までに電力・ガス供給網の相互接続を実現する◇民間投資を促進してインフラ整備を加速させる◇エネルギー源の多様化を進める◇より一段のエネルギー効率向上を図る――の4つを挙げている。

\

最大の焦点だったシェールガスをめぐっては、英国、ポーランド、ハンガリーなどが開発の推進を主張しているのに対し、フランスは環境面の懸念を理由に禁止の方針を打ち出すなど、加盟国の間で温度差が大きい。さらに欧州のシェールガスは岩盤層の深い場所にあるため、掘削コストが米国の3倍に上るといった試算もある。

\

国内でシェールガス開発を進める英国のキャメロン首相は「シェールガスのような固有の資源を最大限に活用してエネルギーの安定供給を確保する必要がある。古い規制によって大きな可能性を秘めた資源開発が妨げられることがあってはならない」と強調した。一方、ファンロンパイEU大統領は「域内企業は電力料金がEUに比べて半額以下の米国などの企業との競争を強いられている。加盟国は安全で持続可能なエネルギー源の開発を進める必要があり、シェールガスも対象に含まれる」と発言。そのうえで「一部の国ではシェールガスが選択肢の1つになる可能性もあるが、他の国ではそうならないかもしれない」と述べ、エネルギーミックスは各国固有の条件によって決定されるべきだとの考えを強調した。

\