2013/6/17

総合 –EUウオッチャー

欧州委が航空管制制度の改革案発表、仏など11カ国でストや抗議行動

この記事の要約

欧州委員会は11日、EU域内における航空管制システムの一元化を目指す「単一欧州空域(シングル・ヨーロピアン・スカイ)」構想の改革案を発表した。航空管制制度の統合を進めて業務の効率化を図り、空の渋滞を緩和して将来予想される […]

欧州委員会は11日、EU域内における航空管制システムの一元化を目指す「単一欧州空域(シングル・ヨーロピアン・スカイ)」構想の改革案を発表した。航空管制制度の統合を進めて業務の効率化を図り、空の渋滞を緩和して将来予想される増便に備えるのが狙い。しかし、管制官らは一部業務における競争入札の義務化や、欧州委が設定する業務目標を達成できなかった場合の制裁などを盛り込んだ改革案に強く反発。安全性よりもコスト削減が重視され、空の安全を確保できなくなるなどと主張している。フランスでは航空管制官の労働組合が11日から2日間にわたりストライキを断行したほか、イタリア、スペイン、ハンガリーなど10カ国でも集会やデモが実施された。

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欧州では国ごとに細分化された航空交通管制に従って飛行ルートが設定されているため、EU域内を結ぶ路線の飛行距離は最短ルートに比べて平均42 キロ長く、遅延や燃料代の増大を招いている。EU加盟国は2009年に採択した単一欧州空域の実現のための法的枠組みに基づき、域内27カ国とノルウェー、スイス、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアの計31カ国に拠点を置く60の航空管制センターが管轄する計650の空域を9つの「機能的空域ブロック(Functional Airspace Blocks=FAB)」に再編することで合意している。しかし、実際には依然として多くの国で管制業務の独占体制が維持されており、統合に向けた取り組みは足踏み状態にある。域内を発着する便数は向こう10-20年で現在の1.5倍に増加するとみられており、欧州委は将来に備えて非効率な管制システムを抜本的に改革する必要があると判断した。

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改革案によると、安全性、コスト効率、輸送能力、環境の4項目について各国当局が目標を設定していた現行制度に代わり、新システムでは欧州委が目標を設定し、達成できなかった場合は制裁を科す。一方、航空管制に関連した多くの業務で特定の事業者による独占体制が確立されている現状を改善するため、気象情報、通信サービス、ナビゲーションなど、中核の管制業務を除いた支援サービスの分野で競争入札の実施を義務付ける。欧州委は事業者間の競争を促すことで20%程度のコスト削減が可能とみている。さらに加盟国の航空当局から完全に独立した新たな機関を設置し、EU27カ国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン、スイスの航空当局者が理事会を構成する欧州航空安全局(EASA)に代わって各国の管制機関の監督を行う。

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欧州委の試算によると、域内の航空管制システムが統合されて最短ルートでの飛行が実現した場合、輸送能力は現在の3倍に拡大する一方、年間50億ユーロの経費節減と二酸化炭素(CO2)排出量の10%削減が可能になる。今後、閣僚理事会と欧州議会で改革案について検討する。

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