2013/7/1

総合 –EUウオッチャー

銀行破綻処理のルールで合意、一元化は先送り

この記事の要約

EU財務相理事会は6月27日、経営難に陥った域内銀行の救済や破綻処理に関する共通ルールについて合意した。公的資金の投入を必要最低限に抑えるため、まず株主や大口預金者などに一定の負担を求めるという内容で、年内の法制化を目指 […]

EU財務相理事会は6月27日、経営難に陥った域内銀行の救済や破綻処理に関する共通ルールについて合意した。公的資金の投入を必要最低限に抑えるため、まず株主や大口預金者などに一定の負担を求めるという内容で、年内の法制化を目指す。これによって「銀行同盟」創設に向けて前進した。ただ、27、28日に開かれた首脳会議では、次のステップとなる破綻処理を一元化する機関の設立については進展がなく、銀行同盟実現までの道のりは遠そうだ。

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銀行の破綻処理ルールをめぐっては、21日のEU財務相理事会で協議されたが、意見がまとまらず、結論を持ち越した。首脳会議に先立つ26日に開かれた臨時理事会でも調整は難航したが、27日未明にようやく合意にこぎ着けた。

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大きな焦点となっていたのは、救済、破綻処理への公的資金投入を抑えるため、株式、債券保有者などにも損失を負担させる「ベイル・イン」と呼ばれる制度。財務相理事会では、まず当該銀行の株主、債券保有者に負担させ、それでも十分でない場合に、預金保険で保護されない10万ユーロ以上の預金者にも負担を求めることで合意した。これによって負債額の8%以上を処理することを条件に、なお必要な場合に対象国が公的救済に踏み切る。公的資金の注入額も、負債額の5%を上限とする。

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同合意では、公的資金注入に関して、各国が原則的に専門の基金を創設することを決めた。同基金の規模は、保険でカバーされる預金の総額の0.8%以上。

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各銀行の拠出によって設立する。ただし、各国には同基金を設立せず、国庫から資金を注入することを選ぶ権利が認められる。また、各国は民間による損失負担について、どうしても必要と判断した場合に、特定の債権者、株主、預金者の負担を免除する権限も与えられる。

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同ルールは今後、指令案の形で欧州委員会がまとめる。欧州議会の承認を経て、年内に成立させる方針だ。

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 EUでは現在、危機に陥った銀行への公的資金注入に関する明確なルールがなく、大手銀行の救済が必要となったキプロスへの金融支援を3月に決めた際、預金者の負担をめぐって混乱が生じた。このため統一ルールを制定し、公的資金の投入を可能な限り抑えながらにスムーズに破綻処理や救済を進めるための枠組み整備に乗り出していた。

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銀行同盟は、債務危機の反省を踏まえ、域内金融システムの安定を維持するためにEUが昨年打ち出した構想。(1)銀行監督の欧州中央銀行(ECB)への一元化(2)銀行の破綻処理を統括する機関の設立(3)預金保険制度の一本化――の3段階で実現する。破綻処理のルール統一は、第2段階の統括機関設立の前提となるものだ。今回の合意は各国による破綻処理の共通ルールを定めたものだが、第2段階では処理を各国に委ねず、財源も含めて一元化する。

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第1段階の監督一元化をめぐっては、昨年末の首脳会議で枠組みについて合意済み。しかし、実現は遅れており、運用開始は当初予定していた13年中から14年下期に延期された。ユーロ圏の財務相会合は20日、EUの金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」が経営危機に陥った圏内の銀行に資本を直接投入できるようにする制度の枠組みで合意したが、その実施は監督一元化が前提となっているため、同じくずれ込んでいる。

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27、28日のEU首脳会議で採択された議長声明には、経済・金融政策の最優先課題として銀行同盟の実現に取り組むことが明記された。ただ、銀行の破綻処理を統括機関に一元化する「単一清算メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度の導入については、処理の権限をEU機関に委ねるにはEU基本条約の改定が必要としてドイツが難色を示したことから突っ込んだ協議は行われず、議長声明では、年内合意を目指して欧州委が今夏に具体案をまとめる方針を打ち出すにとどまった。

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