2013/7/1

産業・貿易

「欧州長期投資ファンド」設立へ、長期プロジェクトの資金調達支援で

この記事の要約

EUが長期プロジェクトへの投資に特化した新タイプの民間ファンド「欧州長期投資ファンド(ELTIF)」を設立する計画を進めている。投資対象として流動性がないため資金を確保しづらい長期のインフラ開発事業や、こうしたプロジェク […]

EUが長期プロジェクトへの投資に特化した新タイプの民間ファンド「欧州長期投資ファンド(ELTIF)」を設立する計画を進めている。投資対象として流動性がないため資金を確保しづらい長期のインフラ開発事業や、こうしたプロジェクトを推進する非上場企業に対する一般からの投資を促進し、実体経済の底上げを図るのが狙い。欧州委員会は域内共通のルールを設けてELTIFを始動させる方針で、6月26日に同ファンドの枠組みを提案した。

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EUでは2020年までに最大2兆ユーロの資金が長期プロジェクト実施のため必要となっているが、これらの投資には流動性がかけるため、短期の利益を優先する一般投資家からの資金は集まりにくい。こうした事業向けのファンドも存在するが、欧州委によると現在は1カ国単位での運営にとどまっており、国境を越えて広く資金を運用する状況にはない。このため欧州委は昨年10月、投資の受け皿となるELTIFを民間投資会社が設立し、共通ルールの下で個人・機関投資家が安全に投資できる環境を整える方針を打ち出していた。

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欧州委が発表した枠組みによると、ELTIFはインフラ、エネルギーなど実在資産のあるプロジェクトや、これらを手掛ける非上場企業への投資を目的とし、これらに運用資金の70%以上を投資することを求められる。運用リスクを減らすため、手持ちの資金よりも多い金額を動かす「レバレッジ」は制限され、デリバティブ(金融派生商品)も投機目的の投資は禁止し、為替リスク回避に限る。また、ファンドマネジャーはEUの「オルタナティブ投資ファンドマネジャー指令(AIFM指令)」に基づく有資格者に限られ、同指令のルールに従って運用しなければならない。

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一方、投資家はファンドが定める一定期間内は投資を引き揚げることができない。各ファンドはこれを事前に明確に説明する義務を負う。

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欧州委はELTIF創設によって、長期プロジェクトの資金調達基盤が拡大すると同時に、年金基金、保険会社など機関投資家や個人投資家は安定した投資収益を確保できるとしている。

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