2013/7/8

総合 –EUウオッチャー

ポルトガルの連立政権崩壊が回避、民衆党と連立維持で合意

この記事の要約

ポルトガルのコエリョ首相は6日、連立政権に加わる民衆党のポルタス党首と連立維持で合意したと発表した。同国ではポルタス党首が2日、最大与党・社会民主党との財政再建をめぐる立場の違いから、外相を辞任する意向を表明し、政局が一 […]

ポルトガルのコエリョ首相は6日、連立政権に加わる民衆党のポルタス党首と連立維持で合意したと発表した。同国ではポルタス党首が2日、最大与党・社会民主党との財政再建をめぐる立場の違いから、外相を辞任する意向を表明し、政局が一気に不安定化していた。同合意によって連立政権が崩壊し、債務危機終息に向けた財政再建が宙に浮くという最悪の事態はとりあえず回避された。

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債務危機で信用不安に陥ったポルトガルは2011年5月、EUと国際通貨基金(IMF)から総額780億ユーロの緊急融資を取り付け、同年6月に発足したコエリョ政権は同支援の条件として約束した財政再建に取り組んできた。これによって財政悪化に歯止めがかかり、国債利回りも危険水域を脱した。しかし、増税、歳出削減など厳しい緊縮策が景気を圧迫し、雇用が大きく悪化。緊縮策に対する世論の風当たりが強まっているほか、連立政権を支える民衆党も財政緊縮策の難色を示していた。

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連立政権内の緊張を高める引き金となったのが、財政再建を主導してきたガスパル財務相の突然の辞任だった。ガスパル財務相は1日、緊縮策に反対する気運が高まってきたことから「信任を失った」として辞意を表明。コエリョ首相は同日、後任にアルブケルケ国庫担当相を任命したが、ポルタス党首はアルブケルケ氏が財政緊縮推進派であることから強く反発し、2日に辞意を表明した。これを受けて民衆党が連立を解消し、社会民主党が少数与党に転落して政府が機能不全に陥り、財政再建が暗礁に乗り上げる懸念が急浮上。直後にポルトガル国債の利回りが上昇し、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5日、ポルトガル長期国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げた。

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民衆党の連立離脱を阻止したいコエリョ首相は、ポルタス党首の外相辞任を受理せず、棚上げした上で、同党首と協議を重ねた。その結果、5日に今後の政権運営のあり方について合意し、民衆党から政権にとどまる約束を取り付けた。

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同合意では、アルブケルケ氏の新財務相就任を確認した一方で、ポルタス党首が経済政策の調整を担当する副首相に就任し、トロイカと呼ばれる欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、IMFの合同調査団との財政再建計画に関する交渉でも責任者となる。さらにポルタス党首の側近である民衆党のデ・リマ氏が経済相に起用される見通しだ。

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合意内容の詳細は、カバコシルバ大統領の承認を経て正式発表される予定だが、コエリョ首相は6日の記者会見で「堅実かつ広範囲にわたるものだ」とした上で、社会民主党と民衆党が「任期満了まで政治の安定を維持することが保証された」と宣言。また、EUとIMFに金融支援の見返りとして約束した財政再建を引き続き進めることについて、ポルタス党首の支持を取り付けたことも明らかにした。

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ただ、民衆党を政権内につなぎとめるため、財政緊縮策の一部見直しが合意に盛り込まれたのは確実。ポルタス党首は5日、今年の財政赤字を国内総生産(GDP)比4%以下に削減するという目標に関して、「より現実的な目標」に修正するべきとの見解を示していた。トロイカとの交渉をポルタス氏が主導するなど、民衆党の政策運営への影響力が増すことで、財政再建路線が混迷する局面も出てきそうだ。

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