2013/7/22

総合 –EUウオッチャー

欧州委が「欧州検察庁」創設を提案、予算関連の不正対策を強化

この記事の要約

欧州委員会は17日、EU予算に関連した犯罪を捜査・訴追する権限を持つ「欧州検察庁(European Public Prosecutor’s Office)」を創設する構想を発表した。リスボン条約で規定された司 […]

欧州委員会は17日、EU予算に関連した犯罪を捜査・訴追する権限を持つ「欧州検察庁(European Public Prosecutor’s Office)」を創設する構想を発表した。リスボン条約で規定された司法警察協力の一環として、EU加盟国の検察当局と連携して国境を越えた犯罪に対処する。ただ、英国、デンマーク、アイルランドは司法・内務分野の共通政策に関する例外規定に基づき、すでに同構想への不参加を表明している。このため、EU加盟国のうち9カ国以上の承認があれば先行導入できる「強化された協力」の手続きにより、2015年1月の創設を目指す。

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欧州委によると、EUでは不正や汚職などの犯罪によって年間5億ユーロの予算が失われており、取り締まりの強化が求められている。EU予算の執行に絡んだ不正に関しては、1999年に創設された「欧州不正対策局(OLAF)」が監視を行っている。具体的には密輸などによる関税の脱税や、途上国向けの開発援助金の流用といった不正の取り締まりにあたっているが、OLAFの法的位置づけは行政上の捜査機関であるため、司法判断を下したり、加盟国の検察当局に捜査を命令する権限などは与えられていない。また、汚職や不祥事などに対する取り締まり状況も加盟国によってばらつきがあり、OLAFの告発を受けて各国の検察当局が訴追し、裁判所が有罪判決を下すケースは全体の2割程度にとどまっている。

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欧州委の構想によると、欧州検察庁は完全な独立機関としてブリュッセルに拠点を置き、欧州検察官と4人の副検察官が本部に常駐する。さらにEU28カ国を代表して各国1人以上の当局者が欧州検察庁の任務にあたるが、それぞれ自国に活動の拠点を置いて非中央集権型の構造とする。欧州検察庁はEUの経済的利益を害する犯罪の捜査、訴追を行うほか、各国の検察当局に対して犯罪捜査を命じることができるが、訴追先は加盟国の裁判所になる。

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欧州委のバローゾ委員長は声明で「欧州検察庁の創設により、納税者のお金を保護し、EU予算に対する犯罪の取り締まりを強化することができる」と強調。また、レディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)は「欧州委はEU予算に絡んだいかなる不正行為も許さない姿勢を表明しており、欧州検察庁に関する提案を実現することでこうした取り組みは大きく前進する」と述べている。

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