2013/8/5

環境・通信・その他

アイルランドで中絶容認法案成立、母体危機・自殺リスクが適用条件に

この記事の要約

アイルランドで7月30日、母体の命が危険にさらされている場合に限り、人工妊娠中絶を認める法案が大統領の署名を経て成立した。カトリック教徒が国民の大半を占める同国では、これまで中絶が全面的に禁止されていたが、上下両院は7月 […]

アイルランドで7月30日、母体の命が危険にさらされている場合に限り、人工妊娠中絶を認める法案が大統領の署名を経て成立した。カトリック教徒が国民の大半を占める同国では、これまで中絶が全面的に禁止されていたが、上下両院は7月に中絶を一部合法化する法案を可決していた。

\

アイルランドでは最高裁判所が1992年、母体の命が危険な状態にある場合は中絶が合法化されるとの判断を示し、欧州人権裁判所も2010年、中絶を全面禁止する法律は憲法が保障する基本的人権を尊重していないとして是正を求めていた。しかし、同国では中絶に反対する厳格なカトリック教徒が多く、これまで法改正は見送られてきた。

\

現行法の見直しを求める声が高まる直接のきっかけになったのは、昨年10月にインド出身の女性が流産しかかっていたにもかかわらず、搬送先の病院で中絶手術を拒否され、数日後に敗血症で死亡したケース。内外でこのニュースが大きく報じられたことで政府は法律の見直しを余儀なくされ、容認派と反対派の間で激しい論争が続いていた。

\

新法によると、母体が「重大かつ差し迫った」危険にさらされていると医師が判断した場合に限り、中絶が認められる。また、妊娠中の女性に自殺の兆候がみられるケースについては、精神科医2人と産科医1人が一致して自殺のリスクが極めて高いと診断した場合に中絶が容認される。さらに一部の女性議員は強姦による妊娠にも中絶を認めるよう求めていたが、反対派が多数を占め、条文を盛り込むことはできなかった。

\

アイルランドでは厳格な規制のため国外で中絶するケースが増えており、英保健省によると、昨年はおよそ4,000人のアイルランド人女性が英国で中絶手術を受けた。新法の成立により、EU内で中絶が全面禁止されている国はマルタだけになる。ギルモア副首相は声明で「アイルランドの女性にとって歴史的な瞬間だ。女性の生命を守ることが新法の目的であり、極めて基本的な権利を保障するものだ」と強調している。

\