2013/9/9

産業・貿易

核開発に絡むEUの対イラン制裁、欧州裁が8件で無効判決

この記事の要約

欧州司法裁判所の一般裁判所は5日、核開発計画に関与したとしてEUがイランの大手銀行や保険会社などに発動した計8件の制裁措置について、EU側の主張には十分な証拠がないとして制裁を無効とする判決を言い渡した。EUおよび加盟国 […]

欧州司法裁判所の一般裁判所は5日、核開発計画に関与したとしてEUがイランの大手銀行や保険会社などに発動した計8件の制裁措置について、EU側の主張には十分な証拠がないとして制裁を無効とする判決を言い渡した。EUおよび加盟国政府が2カ月以内にEU司法裁判所に上訴する公算が大きいことから、司法裁が最終判断を下すまで制裁措置は維持されるが、経済制裁を強化してイラン側から大幅な譲歩を引き出したいEUにとって今回の判決は痛手となりそうだ。

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イランは国際社会の警告を無視して核開発を加速しており、EUは米国と歩調を合わせて同国に対する経済制裁を強化している。昨年にはイラン中央銀行の資産凍結やイラン産原油の輸入禁止に踏み切ったのに続き、域内の金融機関がイランの金融機関と取引することを禁じたほか、EU企業が核開発につながる恐れのあるソフトウエアなどを輸出することも禁止した。さらにイラン政府による核開発プログラム向けの資金調達を妨げるため、同国の有力企業34社の資産も凍結している。

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一般裁判所がEUによる制裁を無効と判断したのは、イラン郵便銀行、イラン輸出開発銀行、イラン保険、イラン・オフショア・エンジニアリング・コンストラクションなど計7社と、独ハンブルクに拠点を置く貿易会社の役員1人に対する資産凍結などの措置。裁判所は判決で、EUはこれらの企業および個人に対する制裁を正当化するための十分な証拠を示していないと指摘している。

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一方、メッリ銀行もEUの制裁リストから除外するよう求めていたが、裁判所は国連安全保障理事会がイラン原子力庁(AEOI)を制裁の対象に指定した後も、引き続き同機関への資金支援を行っていたとして、同行の訴えを退けた。

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アシュトン外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長の報道官は判決について、イランの核開発問題に対するEUの政策が否定されたわけではなく、特定の制裁措置に関して法律上の要件を満たしていなかったということだと強調。「問題となった事案について速やかな決着を図りたい」と述べた。一方、英政府の報道官は判決に遺憾の意を表明したうえで、「イランの核開発計画を支援する企業や個人に対し、引き続き原則に基づいた断固たる措置を講じる必要がある」とコメントした。

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