2013/9/30

産業・貿易

EUの銀行賞与規制は不当、英政府が欧州裁に提訴 英政府が銀行賞与規制にも抵抗、欧州裁に提訴 EU金融改革めぐる対立が

この記事の要約

英政府は25日、EUが域内の銀行に対する賞与(ボーナス)規制を導入することを不服として、欧州司法裁判所に提訴したと発表した。EUは銀行の短期業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどの過度なリスクを伴う行動を助長している […]

英政府は25日、EUが域内の銀行に対する賞与(ボーナス)規制を導入することを不服として、欧州司法裁判所に提訴したと発表した。EUは銀行の短期業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどの過度なリスクを伴う行動を助長しているとして同規制の導入を決めたが、英政府はEUによるボーナスへの介入はEU基本条約に抵触し、金融安定の面でも逆効果になると主張している。

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2014年1月に導入される予定の同規制では、銀行員のボーナスは原則として年間給与と同額(株主の承認がある場合は最大2倍)が上限となる。EU域内に本社や現地法人を置くすべての銀行が規制の対象で、たとえばEU内に本店を置く銀行の東京支店の行員や、逆に邦銀のロンドン支店の行員にも新ルールが適用される。

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同規制をめぐっては、欧州最大の金融センターであるシティを抱える英国が猛反発したが、他の加盟国が賛成に回り、4月に欧州議会で承認された。

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英政府はボーナスが規制されると、銀行が優秀な人材の流出を避けるため、基本給を引き上げるのが必至で、これによって業績が悪化している時でも高い固定給を支払わねばならず、銀行の経営が不安定になると主張している。また、EU加盟国の銀行監督当局を統括する欧州銀行監督機構(EBA)が同規制を管轄することについて、基本条約に定められた権限を逸脱していると指摘。さらに、EUが規制に伴う影響を精査せずに導入を決めたのは問題で、域外で活動するEUの銀行への適用にも法的根拠がないとして、提訴に踏み切った。

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EUの金融制度改革をめぐっては、英政府は昨年に導入された株式、債券の空売り規制について、EU基本条約に抵触するとして反対し、9月中旬に欧州司法裁判所の法務官から支持を得たばかり。さらに、EU28カ国のうちドイツなど11カ国が導入する予定の金融取引税についても不服として提訴している。ボーナス規制でも提訴に及んだことで、金融主権を重視する同国がEUの改革に抵抗する構図が一段と鮮明になってきた。

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