2013/11/18

産業・貿易

保険新規制の実施ルールで合意、16年1月に「ソルベンシーII」導入へ

この記事の要約

EU加盟国、欧州議会、欧州委員会は14日、域内の保険会社に対する新たな規制の枠組みとなるEU指令「ソルベンシーII」を実施するための技術的手法や監督機関の権限などを規定した指令案「オムニバスII」の内容で合意した。EU閣 […]

EU加盟国、欧州議会、欧州委員会は14日、域内の保険会社に対する新たな規制の枠組みとなるEU指令「ソルベンシーII」を実施するための技術的手法や監督機関の権限などを規定した指令案「オムニバスII」の内容で合意した。EU閣僚理事会と欧州議会の正式な承認が必要だが、3者協議での合意を受け、当初の計画から3年遅れで2016年1月からソルベンシーIIが実施される見通しとなった。

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ソルベンシーIIは銀行に対する自己資本比率の最低基準を定めた新BIS規制に相当する保険分野の新ルールで、国際的に事業展開する保険会社に対して関係国の監督機関が連携して監視体制を強化し、グループ全体のリスクを正確に把握して金融市場の混乱を防止することを最大の目的としている。具体的には保険会社に一定以上のソルベンシーマージン(不測の事態が発生した場合でも契約通りに保険金を支払うための「余裕資金」のことで、広義の自己資本)の保有を義務付けることを柱とする内容で、リスク資産の評価技法やガバナンスに関する共通ルールなども盛り込んでいる。

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オムニバスIIはソルベンシーIIを補完するもので、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)の権限と任務、新規制導入後の移行措置、ソルベンシーIIに盛り込まれたルールを実施する際の資産や負債の評価方法などを定めている。最大の論点は年金や国債など長期的な保証を有する保険商品について、ある時点の金利をそのまま負債評価に用いた場合、ボラティリティ(変動率)が高まることにどのように対応するかという点で、負債の割引率をめぐり議論が続いていた。欧州委は事態を打開するため、EIOPAに参考情報の収集を要請。EIOPAはこれを受けて長期保険契約に焦点を当てた影響調査(頭文字をとってLTGAと呼ばれる)を実施し、調査結果をまとめた報告書を基に加盟国、欧州議会、欧州委の間で妥協点を探る試みが続いていた。

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原案では長期保有を目的とした国債などの保険商品について、短期的な市場の変動を適切に取り扱うための保険負債の割引率を20%に設定していたが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、3者協議ではこれを65%に引き上げることで合意した。また、新規制導入後の移行措置に関しては、EIOPAは新たな評価方法への変更に向けて7年間の移行期間を置くことを提案していたが、少なくとも20年の移行期間が必要(ドイツ金融監督庁)といった意見もあり、最終的に16年とすることで妥協が成立した。

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