2013/11/25

総合 –EUウオッチャー

ウクライナが連合協定締結作業を中断、ロシアとの関係悪化を回避

この記事の要約

ウクライナ政府は21日、EUとの包括的な関係強化を目指した「連合協定」の締結に向けた準備作業を中断すると発表した。今月末にリトアニアで開催されるEUと旧ソ連6カ国による東方パートナーシップ首脳会議での調印を目指していたが […]

ウクライナ政府は21日、EUとの包括的な関係強化を目指した「連合協定」の締結に向けた準備作業を中断すると発表した。今月末にリトアニアで開催されるEUと旧ソ連6カ国による東方パートナーシップ首脳会議での調印を目指していたが、実現が難しくなった。ウクライナはEUへの接近を牽制するロシアから強い圧力を受けており、当面は同国との関係が冷え込んで輸出が落ち込み、経済状態が悪化する事態を回避することを優先したとみられる。

\

ウクライナは欧州との経済統合を最優先課題と位置付けてEUとの連携強化を模索しており、自由貿易協定(FTA)を含む包括的な協定の締結を目指している。しかし、ロシアは旧ソ連圏の経済統合に向けてウクライナを自国主導の関税同盟に取り込もうとしており、プーチン大統領は関税引き上げや禁輸などの対抗措置をちらつかせて同国への圧力を強めている。

\

一方、EU側はヤヌコビッチ大統領の政敵で、職権乱用罪で収監されているティモシェンコ前首相の釈放を連合協定締結の条件としており、ウクライナ国内では病気療養の名目で実質的に同氏の釈放を認める法案をめぐって与野党が激しく対立。ウクライナ最高議会が21日の採決で同法案を否決したのを受け、アザロフ首相が連合協定の締結作業停止を決めた。

\

ウクライナのボイコ副首相は今回の決定について、「ロシアとの通商摩擦で生じた損失の補てんについてEU側から確約が得られない状況で、ロシアとの経済的な結びつきを断ち切ることはできない」と説明。ロシアのペスコフ大統領報道官は「貿易および経済面でロシアとの関係強化を図ろうとするウクライナの決定を歓迎する」とコメントした。

\

一方、EUのアシュトン外務・安全保障政策上級代表は「ウクライナの将来はEUとの関係強化にあると確信している。連合協定の署名見送りはEUだけでなく、ウクライナの国民にとっても大きな失望だと思う」との声明を発表。また、連合協定の推進役を担うスウェーデンのビルト外相は「ウクライナ政府は突然ロシアに屈服した。容赦ない政治的圧力が働いた結果だろう」とツイッターに書き込んだ。

\

ただ、ウクライナの大統領府はヤヌコビッチ大統領が東方パートナーシップ首脳会議に出席する予定に変更はないとしており、EUとの協定署名が完全になくなったわけではないとの指摘もある。同大統領は2015年の大統領選で再選を狙っており、ティモシェンコ前首相の政界復帰はなんとしても阻止したいところ。そのため、ロシアの政治的圧力をうまく利用して協定への署名を見送る方針を打ち出し、EU側から譲歩を引き出して前首相を釈放せずに調印にこぎつけるのがヤヌコビッチ陣営の作戦、といった見方も出ている。

\