2013/12/16

総合 –EUウオッチャー

銀行破綻処理の一元化、決着先送り=EU財務相理

この記事の要約

EU加盟国は10日に開いた財務相理事会で、ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度を導入する計画について協議した。14時間に及ぶ協議では制度設計の主要ポイントで一定の前進があ […]

EU加盟国は10日に開いた財務相理事会で、ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度を導入する計画について協議した。14時間に及ぶ協議では制度設計の主要ポイントで一定の前進があったものの、詳細をめぐる調整が難航。19日に開幕する年内最後のEU首脳会議での決着を目指し、18日に臨時理事会を開催して再協議する。

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銀行同盟創設の第2段階となるSRMでは、第1段階であるユーロ圏の大手銀行の監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する制度に基づき、ECBの監督対象となる銀行に問題が生じた場合の処理をECBと欧州委員会の代表、対象国の当局者で構成される「破綻処理委員会」が統括する。

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大きな焦点となっているのが、破綻処理の最終決定権と、破綻した銀行を救済する基金の構造。欧州委員会が7月に発表した案では、破綻処理委が対象銀行を救済するか、閉鎖するかを判断し、処理計画を欧州委に勧告するが、最終的には欧州委が決定権を持つ。破綻または救済の処理は、新設する統一基金を活用する。同基金は銀行同盟に参加するユーロ圏18カ国および自主的に参加する非ユーロ圏の銀行が、預金保険でカバーされている預金の1%に相当する額を拠出して創設される。

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この制度設計をめぐっては、ドイツが最終権限を欧州委が持つ点などについて頑強に抵抗していることから、協議が難航している。今回の理事会では、ドイツが提示した妥協案を軸に調整が行われた。◇最終権限を欧州委が持つものの、破綻処理委の勧告を欧州委が拒否した場合は、銀行同盟参加国の多数決によって決定する◇破綻処理の基金(総額550億ユーロ)は、当初の10年間は移行期間として、各国が独自に創設する基金で運用し、段階的に統一する◇破綻した銀行を救済する際に、当該銀行の債権者にも損失を負担させる「ベイル・イン」と呼ばれる制度の導入を2018年から16年に前倒しする◇統一基金を使う銀行救済は、銀行同盟参加国の3分の2が反対すれば否決となる――という内容だ。

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最終権限については、ドイツが歩み寄った格好。このほかの点でも、大枠で了承されたもようだが、なお詳細について意見の隔たりがあり、決着に至らなかった。例えば、統一基金による救済の可否をめぐる投票システムは、ドイツ案ではECBへの拠出額に応じて各国に持ち票を割り振るが、これでは大国が大きな決定権を持ち、ドイツ、オランダ、フィンランドの3カ国だけで3分の2を占めて拒否権を発動できることから、中小国が反発している。また、破綻処理の統一基金が発足するまでの移行期間中に、EUの金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」を銀行救済に活用するかどうかについても意見が割れている。

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欧州議会が4月中旬に予定される解散の前にSRM制度創設を可決できるようにするためには、年内に加盟国が合意する必要があり、19、20日に開催される首脳会議が最後のチャンスとなる。その前日に開かれる臨時財務相理事会で、どこまで地ならしできるかが焦点となる。

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